さまざまな意見と成長への意欲の相乗効果が、勝利への進化につながる

スキージャンプ選手
高梨 沙羅 Sara Takanashi(クラレ)

成長の『糧』は第三者の言葉の中にある

ワールドカップでの10シーズン連続優勝、男女歴代単独最多優勝記録60勝、男女歴代単独最多記録となる個人通算109度目の表彰台といった輝かしい戦績に加え、2018年の平昌では3位に輝くなど、女子スキージャンプ界の世界的トップ選手として活躍を続ける高梨沙羅選手。自身の活躍には、多くの人の存在があるといいます。
「試合と試合の間のちょっとした期間は、仲の良い友達と電話で話します。競技の結果を報告したり、試合とはまったく関係ない他愛ない日常の出来事を話すだけで、心がリフレッシュするんです。そんな友達の存在は、競技に取り組む上でも非常に大切です」
また、自身を成長させる上でも、さまざまな人との関わりが欠かせない、とも。
「私のジャンプに対して、多くの人がアドバイスや意見をくださいます。私には見えないけれど、第三者の人には見えている部分って絶対にあるんですよ。だから好意的な意見も批判的な意見も、私にとっては全部成長の糧になる。そう考えれば、たくさんの意見に耳を傾けることと、私自身の成長の間には相乗効果が生まれていると思います」
特に、ネガティブな意見にもしっかり耳を傾けるのは、十代の頃から活躍してきた高梨選手だからこその想いがありました。
「良いことばかり言われるのは、上に引き上げてもらえないというか…ネガティブな意見からもしっかり吸収し成長の糧にしたい。あと、自分の中では『本当のことを話してほしい』という想いが強いんだと思います。本音の中にこそ成長のヒントがあると思います」
ジャンプスーツをサポートするミズノには大きな信頼を寄せている、と高梨選手。
「ジャンプ競技はスーツが勝敗に大きな影響を与える競技ですが、ミズノのスーツは本当に信頼して飛べるんです。ミズノスタッフの皆さんは本当にいい人ばかりで、いつも私のジャンプを全力で支えてくださっています。さらに担当スタッフが元ジャンプ選手なので、感覚的な言葉を理解してもらえるので助かります」

北京で好成績を収めることが、最も恩返しの気持ちが伝わる

10年以上に渡り世界のトップ選手として活躍し続ける高梨選手。常にルールが変わり、進化を求められる競技のせいか、競技や練習ではあえてルーティーンを作らないようにしているといいます。
「ルーティーンを決めてしまうと、それに囚われてしまうかもしれないので、あえて決めないようにしてきました。むしろその瞬間の状態に合わせて、いかに臨機応変かつ柔軟に対応するかを意識してきました」
さらに長期間のシーズンを戦い抜く上では、シーズン中の修正や改善、進化が不可欠となります。そこで大切にしているのは、自分の気持ちに素直にアクションすること。
「ジャンプの中で気持ちがモヤモヤする部分を感じたら、そのモヤモヤが解消されるまでトレーニングに取り組みます。後回しにしたり、積み残したりはしませんし、逆に『飛びたくない』と感じる時は飛びません。飛びたくない気持ちになる時はたいてい身体が疲れているので、無理して飛ぶとケガにつながる可能性もありますから」
最後に2022年の目標を尋ねると、「成長した姿を北京の舞台で見てもらいたい」と高梨選手。
「平昌以降、自分のジャンプスタイルをゼロから見つめ直して取り組んできた結果、ようやく形になりつつあります。今の私があるのは、今まで支えてきてくれた人たちのおかげなので、その人たちに感謝の気持ちを伝え、恩返ししようと考えたら、北京で良い成績を残すことが一番の方法かな、と。だから2022年は、北京で最高の結果を残したいですね」