困難な時期だからこそ、 それを乗り越えるために結果を出した。

オレゴンで行われた2022年世界選手権の男子400mと男子4×400mリレーの日本代表として出場した佐藤風雅選手。4×400mリレーでは、日本新記録の樹立に大きく貢献しました。そんな世界の舞台で活躍する佐藤選手に、400mの「CRAZY LOVE」な話をうかがいました。

両親のひと言が、全力で陸上に取り組む原動力に

写真

400mの魅力はなんでしょうか?

400mは100m走とか200m走に比べると競技時間が長いので、先行型とか追い込み型という具合に選手の「走りの個性」が出やすいです。なので、最後の最後まで勝負がわかりません。ここが400m最大の魅力ですね。

400mに取り組んだきっかけは何ですか?

もともと野球をやっていて、それと並行して陸上競技の駅伝や走高跳をやっていました。初めて400mを走ったのは中学校内の記録会のような大会で、いきなり優勝したんです。でも、なぜ急に400mに出場したのかは全然覚えていないです(笑)。当時、長距離を走る駅伝はあまり自分に合っている気がしなかったのは覚えているのですが。おそらく、学校内の大会でなんとなく出場して優勝し、勝つ楽しさを味わえたことが400mを始めた一番の理由だと思います。きっとその時、自分の中で「400mなら、イケるかも」と思ったんでしょうね(笑)

写真

競技に向き合う中で、想像を絶する辛さや厳しさを感じると思います。それでも競技を継続する原動力は何ですか?

大学3年の時の日本選手権ですね。初めての日本選手権出場で、例年なら決勝進出確実な45秒台を出したのに、その年に限って第9位の記録になって決勝進出できなかったんです。45秒台が出た喜びよりも絶望感の方が大きくて…。それから2年間ぐらい、決められたメニューをただこなすだけの練習をしていましたね。そんな自分を変えたのは、「陸上を続けてほしい」という両親のひと言です。「陸上は諦めろ」と言われると思っていたら「続けてほしい」と。あの時の言葉が、今も自分の原動力になっています。

写真

400mの注目度が上がる結果を出し続ける

競技人生の中で、最も心が揺さぶられた瞬間を教えてください。

2020年の「富士北麓ワールドトライアル」ですね。コロナ禍で、2020年の東京を含めたあらゆる大会が延期される中で9月に開催された大会ですが、私自身は「こんな時期だからこそ、やってやろう」という気持ちでした。実際に約3年ぶりにセカンドベストが出て、「俺もやればできる!」と気持ちが高ぶったのを覚えています。

人々がスポーツに魅了されるのはなぜだと思いますか?

例えば400mを走る時間は約43~46秒間。この間、多くの人々が選手たちを注視します。あの注視している時に感じる一体感こそがスポーツの魅力ではないでしょうか。でもその時、選手である自分は別の場所にいる感じです。そしてゴールした瞬間に見ている人々が喜んでくれた時、ようやく自分もその一体感の中に加わる、そんな感じがします。

400mへの愛が感じられるエピソードがあればぜひ教えてください。

普段仕事で歩いている時や家族と話をしながら歩いている時、400mに活かせそうなリズムや動きを感じる瞬間があります。私は「体全体をお尻に置く感じ」という具合にお尻の使い方を大切にしているせいか、その動きを感じるリズムとか動きって練習中にはあまり見つからなくて、突然日常の中で「おっ!今のいい感じ」という風に感じるんです。そういう時はすぐ反復して覚えようとするので、全然周りの人や家族の話を聞いてない。それで、あとから大変なことになったり(笑)。だから最近は「今、思いついた!」と正直に言って、話を止めちゃいますね(笑)

これからも佐藤選手にとって400mが「CRAZY LOVE」な存在であり続けるためにどうしていきたいですか。

2022年の世界選手権の時のように、400mの注目度が上がるような結果を出し続けていきたい。そうすることで、ひとりでも多くの若い選手に「400mってカッコ良くて面白そう」と思ってもらい、始めてもらいたいですね。