兒玉選手の写真

2021年の東京や2022年の陸上世界選手権では女子4×100mリレーで日本チームのメンバーとして出場した兒玉芽生選手。2022年には100mで日本歴代2位の記録となる11秒24を叩き出すなど、日本女子短距離走を引っ張っていく存在といえる兒玉選手に陸上短距離走に対する「CRAZY LOVE」な話をうかがいました。

1%の可能性でも挑戦したくなる短距離走のワクワク感

兒玉芽生選手:写真

短距離走の魅力はなんでしょうか?

小学校からずっと短距離走でしたが、最初は「陸上と言えば100mがカッコいい」というイメージだけで始めました。でも今思うのは、道具もスパイクだけ、自分自身の心と肉体だけで戦うところに魅力があるなって。私は特に心の部分を大切にしています。スタートライン上って横一線じゃないですか。あそこでレースに心身ともに入りきれていないと、心が乱されるんです。100分の1秒が勝敗を左右する短距離走だからこそ、心の状態が勝敗を大きく左右します。だから私はレースに入りきるために、競技場では他の人とあまり話しませんし、自分が意識すべきところだけに集中してスタートの瞬間を迎えるようにしています。

競技に向き合う中で、想像を絶する辛さや厳しさを感じると思います。それでも競技を継続する原動力は何ですか?

2つあります。ひとつはサポートや応援をしてくれる皆さんに良い報告をしたいという想いです。もうひとつは、勝負には「絶対」がないからこそ、1%でも可能性があるなら挑戦しようと思わせてくれるワクワク感のようなものがあるんですよ。短距離走に取り組んでいると、それをたくさん感じるんですよね。この2つがあるから続けられています。

兒玉芽生選手:写真

競技人生の中で、最も心が揺さぶられた瞬間を教えてください。

小学生の時に全国大会で優勝したり、社会人になるまで大きな大会で負けた経験があまりなかったので、いつの間にか自分の中でも勝つことを使命のように感じていました。それが社会人になって2022年の前半シーズンはひたすら負け続けたんですよ。そんな中、日本代表選考がかかった100m決勝でも2位で負けてしまったんです。しかも、その翌日に走った200mはぎりぎり8位での予選通過。
でも、次の日に行われた200m決勝で優勝できたんです。100mで負けた後に200mで優勝できたのは、100mで負けた自分をちゃんと受け入れられたからだと思っていて、自分の成長を自分で実感できた瞬間になりました。あの時は、自分自身の力で自分の心を揺さぶったと思います。

てっきり100mで日本歴代2位となる11秒24を出した時かと思っていました。

あれは練習もしっかり積めていたので、出るべくして出た記録でした。だから、自分の中では想定内という感じだったので案外冷静でしたね。

兒玉芽生選手:写真

24時間365日、頭のどこかに陸上競技がある

短距離走へのCRAZY LOVEなエピソードがあればぜひ教えてください。

わかりにくい答えかもしれませんけど、とにかくいつも陸上のことを考えてます。やっぱり好きなんでしょうね。プライベートで友達と旅行に行っても、ちょっと空いた時間にパソコンでフォーム解析に結果を見たり、寝る前にイメージトレーニングしたり。

本当に四六時中、短距離走のことが頭から離れないんですね。

友達と旅行した時は、さすがに忘れようと思っていたんですが、友達が寝て1人になった時なんか気になっちゃって。「ちょっと体幹トレ1分だけして寝よう」って、そっと布団から出て筋トレしたこともあります。だいぶヤバいですよね(笑)

人々がスポーツに魅了されるのはなぜだと思いますか?

スポーツに取り組む姿を通じて、その選手たちの人生を垣間見られるからじゃないでしょうか。しかもきれいなところだけじゃなくて、泥臭い部分も垣間見えますよね。特に今は過去の動画も簡単に見られますから。 あと、スポーツに取り組む側として感じるのは、ずっと勝ち続けている選手はもちろんですが、いろいろな困難を乗りこえて勝利をつかみ取った選手も人々を沸かせる力が大きいな、って感じています。

撮影場所:イノベーションセンター MIZUNO ENGINE