最大10メートルもの高さがある飛び込み台から飛び出し、着水までの動作や技術、美しさを競う競技、飛込。飛込の玉井陸斗選手(JSS宝塚/須磨学園)は、2022年に開催された日本選手権高飛込で優勝、さらに世界選手権高飛込でも準優勝の成績を収めました。高校生ながらすでに日本のトップとして活躍する玉井選手に、飛込競技の「CRAZY LOVE」な話をうかがいました。
ケガの恐怖と闘いながら新しい技を自分のものに
観客の、家族の、そして地元の人々の歓声に心が揺さぶられた
競技人生の中で、最も心が揺さぶられた瞬間を教えてください。
やはり初めて日本室内選手権飛込競技大会で優勝した時ですね。まだ12歳だったんですが、実は周囲も自分も優勝なんて頭の片隅にもなくて、入賞できたら…ぐらいの雰囲気だったんです。史上最年少での優勝だったんですが、会場にいた観客の皆さんの歓声も凄かったですし、その後の両親や地元の皆さんの喜びようが凄くて(笑)。あの時は自分も想定してなかったというのもあり、かなり心が揺さぶられましたね。
人々がスポーツに魅了されるのはなぜだと思いますか?
一番は、選手たちが全力で頑張る姿ですよね。そこに試合の勝ち負けだけじゃなく、そこまでの努力とか苦労とか一度どん底に落ちてからの復活とか、心に残るストーリーも加わって人の心を魅了するんじゃないかな、と。僕自身、羽生結弦選手の「報われない努力もあるんだな」という言葉を聞いた時、ものすごく共感したというか、羽生選手と自分が重なったというか…。どれだけ努力して練習してもうまくいかない時、勝てない時ってあるんですよ。あの羽生選手ですらそんな気持ちになるんだと知って、凄く親しみを感じたというか、その思いに共感できて距離が近づいた気がしました。
飛込への愛が感じられるエピソードがあればぜひ教えてください。
板飛込って、飛び出すまでの助走で、自分なりのステップを踏むんです。普通に街で歩いている時に何となく助走のステップを踏んじゃう(笑)。ホント自然に出ちゃうんですよ。あと、道端に引かれている線を見ると、踏み切り板の先端に見えます。つい踵だけを線から出して浮かせて、つま先立ちしてしまうんです(笑)
これからも玉井選手にとって飛込が「CRAZY LOVE」な存在であり続けるためにどうしていきたいですか。
とにかく「楽しむ」ことですね。「しんどい」と思ったら続けられないから。好きか嫌いかよりもまず「楽しい」をめざして、それが「好き」につながっていけばいいかなって。そして、その「楽しい」気持ちを持ち続けるために、常に新しいことに挑戦し続けたいですね。