スキージャンプ競技 陰の秘密兵器!スキージャンプ専用の手袋とアンダーウエアを開発!

11月から本格的にシーズンが始まった、ウインタースポーツ。
実は、一部のスキージャンプ日本代表選手は、ある秘密兵器を着用して試合に出ています。

それは、選手のパフォーマンスをサポートするためにミズノが新たに開発した「スキージャンプ手袋」「スキージャンプ専用のアンダーウエア」です。今回のミズノ発見隊は、新たに開発されたこの2つのアイテムをご紹介します!

スキージャンプ競技は、4つの項目をポイント化し、ポイント数で勝敗を決めます。4つの項目のうちの1つが「飛距離」です。
「飛距離」を伸ばすためには、空中で進行方向に抵抗なく進むこと、落下方向に落ちないように風を受けることなどの方法があります。

ミズノは、選手が身につけるアイテムで少しでも「飛距離」を伸ばすため、ジャンプスーツ以外のアイテムでも工夫ができないかと考え、選手の声も聞きながら「スキージャンプ手袋」と「スキージャンプ専用のアンダーウエア」の開発を始めました。

■新たに開発したスキージャンプ手袋の秘密

スキージャンプ選手は、実は手の甲を下にしてジャンプする選手がほとんどです。この“手の向き”に今回注目しました。

スキージャンプ

スキージャンプ

それが、手の甲側を反らせることで「より風を受けやすいパターンを採用した手袋」です。

スキージャンプ手袋 (左)従来モデル (右)新モデル

スキージャンプ手袋 (左)従来モデル (右)新モデル

上記の写真が、従来モデルと新モデルの比較写真です。赤丸部分の指先の方向に注目してください。一般的に販売されているスキー用手袋は従来モデルと同様、指先が下方向に向いています。新モデルは、指先部分がまっすぐです。このような仕様にすることで、手をできるだけ平らにし、手の全体で風を受けることができると考えました。日本を代表する選手の数名が着用して大会に臨んでいます。ぜひ手先まで注目してみてください!

■新たに開発したスキージャンプ専用アンダーウエアの秘密

スキージャンプスーツの下に着用するアンダーウエアは、他のスポーツ同様に少しタイトなアンダーウエアを全選手、着用しています※1。そこで選手のジャンプのパフォーマンスをサポートする新たなアプローチとして、新たなアンダーウエアを開発することにしました。

※1 スキージャンプのルール内に、アンダーウエアの着用が定められており、アンダーウエアの生地の厚さなどの規定もあります。

新たなアンダーウエアを開発するにあたり注目したのは、アンダーウエアの通気量です。通気量とは、一定時間に一定場所を通る空気の量のことです。
スキージャンプのルールの中で、スーツとアンダーウエアの通気量がある一定基準※2を下回ってはいけないと定められています。通気量が低くなりすぎると、ジャンプ中に風を受けやすくなり危険であることから、このルールが定められています。

※2 スキージャンプのルールで「スーツの通気量は40L/m2/secを下回ってはいけない」「アンダーウエアの通気量は60L/m2/secを下回ってはいけない」と定められています。

新たに開発するアンダーウエアは、できるだけ基準値近くまで通気量を下げることを目標にしました。
ちなみに、一般的なスポーツ用アンダーウエアや従来モデルのアンダーウエアは、通気量の測定機械で計測不能なくらい、通気量が高い素材で作られています。多くの生地は、通気量が「高い」または「低い」の二極化しているそうです。

ミズノ自社工場「ミズノテクニクス(株)氷上工場」

ミズノ自社工場「ミズノテクニクス(株)氷上工場」

まずは、縫製のプロフェッショナルが集まる兵庫県丹波市氷上町にあるミズノ自社工場「ミズノテクニクス(株)氷上工場」で生地探しです。この工場では、スキージャンプスーツやスピードスケートスーツの縫製やミズノ開発品の縫製などを行っています。工場内にあるたくさんの生地の中から、通気量が低そうな素材をひとつひとつ測定していきました。目標にしていた通気量の数値に一番近い生地は、生地に厚みがあり、肌触りが硬めなアルペンスキーのレーシングスーツの生地でした。

左(黒色):従来モデルの生地 右(白色):新モデルの生地

左(黒色):従来モデルの生地 右(白色):新モデルの生地

アンダーウエアは、動きやすさも追求しなければなりません。
スキージャンプ競技は、助走時にしゃがむような姿勢をキープするため、体の後ろ側は伸びる素材を採用する必要がありました。そこで、動きやすく伸びやすい生地を採用していた従来モデルと同様の生地を採用することにしました。

新モデルの裏表

新モデルの裏表

実は、生地と生地の配置以外にも、工夫したポイントがありました。それは、「縫製方法」です。
スキージャンプで着用するアンダーウエアは、ルールで生地の厚さが決まっています。新たに採用した生地は厚みがあり、通常の縫製をするとルール違反になることがわかりました。そこで、縫製方法を工夫したのです。
生地と生地がフラットな状態で縫製されるフラットシーマ(フラットシーム)という縫製方法を採用することで、ルールをクリアし、ついに完成した新たなアンダーウエア。

フラットシーマ(フラットシーム)

フラットシーマ(フラットシーム)

通気量は約65L/m2/secと基準値に近く、さらに動きやすさにもこだわったアンダーウエアが完成しました。

アンダーウエア (左)従来モデル (右)新モデル

アンダーウエア (左)従来モデル (右)新モデル

■最後に、スキージャンプ販促担当の尾形さんに、選手からの声を聞きました!

「選手からのフィードバックは上々です。風を受けやすくなるようにと考え、新たに手袋とアンダーウエアを開発しました。ただ、実際にスキージャンプで飛距離が伸びることを証明するようなデータの収集は難しく、最終的には選手の感覚によって、使用するかどうかを決めてもらう形になります。
これからも、ミズノとしては選手のパフォーマンスを支えるギアの開発を続けていきます。2月の試合からも、選手の活躍に期待したいです!」