Interview : Ryoji Tsuchiya of Rock Steady Crew 歴史あるHIP HOPクルーに在籍するミズノ社員 Vol.3
ニューヨークのブロンクスで生まれたHip-Hop。多くの人を惹きつけ、巨大な畝りとなって世界各国に波及したムーブメントは今もなお進化を続けている。テクノロジーの進歩によって新たなサウンドが生まれ、それに呼応するように新たなダンスのスタイルが生まれる。近年ではソーシャルメディアを媒介してインディペンデントなアーティストやダンサーがスターダムへと駆け上がるといった話も珍しくない。音楽業界は言わずもがなファッション業界でも多大な影響力を持つHip-Hopアーティストの活躍ぶりはシーンが円熟の時を迎えたことを感じさせる。そんなHip-Hopシーンの黎明期から活動を続け、今年40周年を迎えた『Rock Steady Crew』に在籍する「土屋 亮二」へのインタビュー最終回では現在のダンスシーンへの思いを語っていただこう。
- 日本のダンスシーンに対して思うこと -
現在の日本のダンスレベルは世界的にもトップレベルと言われています。フィジカル面で海外に劣っていたとしても、アイディアや工夫の仕方、そしてチームワークの高め方など、世界から注目されています。そしてたくさんの人たちが、コンテストやバトルイベントへ参加したり、イベントでのショーケース、コミュニティー形成、趣味、習い事、部活、サークル活動などを通じて、ダンスと関わっています。また、ダンスアーティスト、振付師、インストラクター、審査員、イベントオーガナイザーなどの仕事もあります。
しかし、そもそも生活に近い場所にありエンターテインメントやアートといった観点での注目度も高い欧米と比べると、日本では一般大衆への認知理解はまだまだ低く、ダンサーとして食べていける人は一握りという状況です。
‘見る側からしてみたら、どういう部分を評価すれば良いのか分からない。’評価基準や周りの目を気にする日本人ならではの意見も多いです。では、認知拡大や理解促進のために、分かりやすい明快なルールを策定すれば良いのか?商業的な力も加わりシーンは広がるかもしれない。でも、ダンス本来の自由な表現という良さが失われるかもしれない。そんな業界全体の葛藤の中でも、様々な考えを持ち活動する関係者がたくさんいて今のシーンは成り立っています。
そんな中私が思うのは、‘ダンスの何が魅力なのか?’その“想い”を大切にしてほしいということです。そしてまず、自身が自分の“想い”を理解すること。それはHip-Hopカルチャーの本質的な力を理解することにもつながってくるんです。
at Crash Boat Beach, Puerto Rico
最初は、かっこいい、面白い、流行ってる、モテそう、もてあましている若いエナジーの発散の場、それしかやることがない、何でもいいと思います。そこからみんなダンスを通じて、たくさんのHip-Hopカルチャーの良い面を無意識に体験していきます。その中で、人それぞれ“想い”を持っているはずなんです。ダンスの上手い下手とか、経験の長さとか、現役かどうか、は関係ありません。みんな自分なりの“想い”があるはずです。
次に、その“想い”が確かな人は、それを社会へ発信したり、色々な世界の人とコミュニケーションをとって欲しいなと思うんです。私たちは社会で生きている以上、社会の一員です。だから、私たち全員に、社会や未来に対しての責任や、やれることがある。そして、生きる中で時間を割いてきた経験は、未来に生かすべきだな、と。自分なりにでいいんです。小さなことでもいいんです。それが、誰かのためになったり、“未来”のためになったりするんです。
これがまさにHip-Hopカルチャーのパワーであって、最終的にこのカルチャーの本質的な価値をより多くの人に正しく理解してもらえる方法だと思います。そして、シーンが広がり注目を浴びるようになってきた今こそ、こういう行動をするタイミングだと思います。
‘既成の現象を見てくれ!’というスタンスで派手にメディアや流行へ訴えかける手法もあると思いますが、地道に本質的な価値を伝えることで理解者を増やすことも大切です。そのためにコミュニケーションをとることが大切なんです。
私の“想い”についても話したいと思います。
世界には様々な場所があり、それぞれ良い部分も悪い部分がある。例えば、生活が貧しくても心が豊かな場所もあるし、その逆もある。生活が豊かでも心が貧しい場所もある。
私は社会人として日本で働く中で、様々な業界・職種を経験してきました。その中で気になる社会問題や話題とたくさん出会いました。自己肯定感が低い若者、過重労働、メンタルヘルス、消費型経済、評価制度、格差社会。少し極端ですが今の日本は、“心の幸せゲットー地域”じゃないですか?って思っちゃいます。
どんなに便利で安全な世の中でも、何が本当の幸せなのか、その答えは分からないな、と思いました。私たちの先輩方もそれを模索しながら今の日本を築いてきたんだな、と学びもしました。
at THE BIRTH PLACE of Hip-Hop Block Party
そんな中でも、私は、人それぞれの形で、平等にコミュニケーションをとって、人間らしく生きていきたい。そしてこれから先そういう世の中であって欲しいと願っています。これは、自分ならではの経験や体験から得た今の“想い”です。
この“想い”を叶えてくれる一つのものがダンスを含むHip-Hopカルチャーなんです。だから現代の日本社会において価値があると思うし、現に私も今までHip-Hopカルチャーにたくさん助けてもらい幸せをもらって、今があります。Hip-Hopカルチャーから多くのことを学んだり、“夢”や“希望”や“愛”を与え合えるんです。心からHip-Hopカルチャーに感謝しています。
一人の社会人、一人のB-BOYとしての、そんな“想い”を現在の活動に込めています。
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