「ACROSPEEDシリーズ開発」に関する特集記事がソフトテニスマガジン8月号(6月27日発売)に掲載!
対談 新製品の魅力&今のテニス
スピードをテーマに開発されたアクロスピード。
今回は試打などで開発に協力した長江光一選手に、
ミズノの元日本代表、小林幸司さんと語ってもらった。
今のテニスにこのラケットがいかにマッチするのか。
最前線で起こっている状況と新製品の魅力をお伝えする。
一瞬の弾きが魅力!
アクロスピードという新ラケットから説明していただけないでしょうか。
小林 ミズノが得意にしている弾き系、反発系のシリーズがアクロスピードで、アクロ(最上位)というスピードを極めるという想いを込めたネーミングになっています。相手の時間(とき)を奪うのが開発コンセプトになっていて、いかにスピードボールを打てるかにということに開発段階から時間の多くを割いてきました。長江選手には試打にご協力いただき、その声を形にしていきました。実際に長江選手に使用していただいているのは7月に発売になったV-01モデルです。以前使用していたモデルに対する意見をふまえ、こちらの考えているイメージも反映できたラケットが完成したと思っています。スピードが大きなテーマですが、ただ速いボールを打つだけでなく、ボールがラケットのどこに当たったのかというフィードバックが手に伝わる設計になっているので、その時のボールがどうなのかを判断できますし、こうなったからこうだという認識も持てます。
長江さんは使用してみて、どういう感覚がありますか。
長江 ラケットを変更して1カ月ほど経過していますが、今回はすぐになじみました。ダブルフォワードというスタイルなので、相手との接近戦の中でどちらが先にいい弾きをして主導権を握れるか。これは大きなポイントです。厳しいところに速いボールを打ち込んでいけるかが勝負のカギになってくるのですが、ストロークで速いボールを打つというよりは、ボレーボレーの弾きとか、今は0コンマ何秒かで主導権を握れている感覚が前のラケットよりもあります。そこが一番いいなと思っている点で、変化を感じているところですね。
ダブルフォワードの話も出ましたが、プレースタイル面での変化を経験されてきたお二人ですが、そういう点からもう少しお話しいただけないでしょうか。
小林 インターハイの男子個人の決勝を見ていましたが、昔の雁行陣の形と変わっていないというか、後衛がラリーをして、前衛が絡んでいくシーンが多かった。展開によっては後衛も前に行くしスマッシュも打つので、柔軟性が出てきたと思います。ゆっくり後ろで構えているだけでは苦しくなっているのは感じますね。長江選手が高校の時はどうだった?
長江 自分の高校時代、ダブルフォワードはまったくなかったです。ダブルフォワードは中華台北が少しやっていて、見よう見まねで、インドアシーズン、選抜大会、全日本私学大会は当時のペア、上嶋(俊介)と少しやっていた記憶があります。
小林 2003年の広島の世界選手権から、国際大会ではダブルフォワードに対応しないといけないということで、本格的に動いていった感じですね。いろいろなペアが取り組み始めて、特に国際大会はハードコートになるので、必要性が分かってきたというか。長江選手が初めて出た2011年の世界選手権はクレーでも韓国がダブルフォワードを取り入れていましたし。
長江 今年の5月に韓国の東亜日報杯に参加させていただき、韓国の実業団を生で見ましたが、7割ぐらいダブルフォワードでした。雁行陣はほとんどいなかった。
小林 クレーでもカットして前に行くということ?
長江 そうですね。雁行陣の方が少ない。韓国のベテラン勢がダブルフォワードをして、テクニックで勝負している感じがしました。セカンドでも攻められるのが大きいと思います。
小林 2本ともカット打てるし。
長江 ファーストで上からフォールトして、2本目に下からカットというのは現実的に難しいのではないですか。
小林 同じのを2本打つ方がいいよね。男子の場合、ボール自体は速くなっているのかな。
長江 昔の雁行陣だったら、後衛がしっかり構えて、しっかり打つ。今の高校生はコンパクトでシャープに振るので、ボールのスピードは今の方が速いかもしれませんが、以前の威圧感は減っている。スイング自体が変わっているので、難しいところですが……。
小林 今のラケットは手だけというか腕から先だけで振れてしまうので、そういう点が大きいかな。
長江 そういう感じはしますね。
小林 今年のインターハイを見ていて、特にそう感じますね。ポジショニングがベースライン寄りで、しかも打ち負けないので、前衛が大変そう。絞って、タイミングを合わせて、きれいにボレーする場面が減りました。だから、逃げていくロビングに重点を置いているのかなと感じました。大学生もオーソドックスになっている気がします。
長江 そうですね。スマートになっているような。
今の時代に合ったラケット
小林 世界での戦いはどうなっていますか。これからも含めて。
長江 今の日本代表では決めにいったハーフボレー、スマッシュが簡単にフォローされる時代なので、反応速度はめちゃくちゃ速くなっていると感じています。5年前よりは確実に速くなっている。ハーフボレー1本ではとても決まらない。上松君(俊貴)、内田君(理久)なんかもその代表ですし、台湾の左利きの余(凱文)/林(韋傑)ペアもそう。だから、よりコンパクトにしないといけません。以前は払う感じでしたが、韓国のように左手を添えてできるだけコンパクトにして、弾きは台湾のように少しパンとするのが主流です。コンパクトにすると弾けないですが、今はそれが弾けなければ勝てなくなっている。だから、アクロスピードはコンパクトでありながら、そこで一瞬の弾きを出してくれるので、今の時代に合っています。特にダブルフォワードとか、思いきり構えて打つ人ではない人に合っていると思います。
小林 最初はカットサービスを返して、ハーフボレーしたら1本、2本で決まったのに、もう空中でもそれを返せる時代になっているので、それが相当有効なところに打たないと決まらない。ボレーして、大きく振れば振るほど次が遅れるものね。
長江 遅れますね。パンパンと返ってくるので、よりコンパクトにしてというイメージ。弾けないのが課題です。もう少し手堅くパンパンとコンパクトに弾けたらいいと感じます。
小林 足が使えて、見た目はコンパクトだけどボールはえぐい選手もいると思うのですが、最近は少ない感じです。飛ばしたかったら、大きく振ってしまう。ボレーも弾きたかったらテークバックが大きくなってしまう。
長江 篠原/小林ペアや今の上松君もそうですが、うまくなっていく過程でどんどん技術的にシンプルになっている印象があります。上松君もここ1年ぐらいは、安定感を出すためにシンプルにしている。どんなことも上達するためには余分なものをそぎ落としていく作業が必要で、そうなるとどうしても弾けないことになります。どうやってコンパクトにしながら弾いていくのか。それはテニス界の課題かなと思っています。
小林 今回のアクロスピードはそういう手助けをできるということでしょうか。
長江 僕のスタイルには一番合っています。