SMOOTH SPEED ASSIST 誕生ストーリー Vol.04 ヒアリングを重ね、既成概念を覆す新機能を

“SMOOTH SPEED ASSIST開発ストーリーVol.04。常識を覆すような新しいプロダクトを作る必要性を感じていた企画開発の青井俊輔は、これまで以上にアスリートへのヒアリングを重ね、ついにミズノの新機能“SMOOTH SPEED ASSIST”を実現し、製品化に漕ぎ着けた。今回紹介するのは第1弾のシューズを世に送り出すまでのストーリー。“SMOOTH SPEED PROJECT”を立ち上げた青井の決意とは。

小学から大学までサッカー部で、サッカーシューズを作るためにミズノに入社し、トップ選手のサッカースパイクの企画を担当する。マーケティングを経て、ランニングシューズの担当に。THE MIZUNO ENERZYなど革新的なシューズを世に送り出している。

既成概念に捉われないアイデアが賛否両論を巻き起こす

 アスリートが人生をかける舞台で、彼らに選ばれるシューズをつくりたい――そんな思いからスピードランニングに関するプロジェクト“SMOOTH SPEED PROJECT”は出発した。

ミズノがプロダクト開発において大切にしているコンセプトは「スムーズさ」である。
それは、単にランニング動作中の体重移動のスムーズさを意味するのではなく、“ランニングという行為にランナー自身が没入できる、ノイズがない状態”と定義している。

プロジェクトではまず、「スピードランニングにおけるスムーズさ」を捉え直すことから始め、プロジェクトのメンバー間では様々な議論がかわされた。
「既成概念を覆すような新しいプロダクトを作る」――プロジェクトの発起人である青井は、その必要性を感じていた。
そんな折、青井を含む数名のメンバーの頭の中にあったのが、プロジェクトメンバーの一員でもある梶原が作った試作のランニングシューズだった。青井は直感的に「梶原の観点こそ、新しいプロダクトにつながる」と感じていた。梶原が作ったシューズは、ミッドソール部が厚めで踵部分が大胆にカットされた独創的な形状をしている。それはまさに、既成概念にとらわれないアイデアから導き出されたものだった。
「今までなかった範囲にまで足を踏み出して、良いものを作っていこうという気概を持ったメンバーが多かっただけに、ポジティブに捉える意見も多かったです」と、梶原のシューズに可能性を感じていたのは青井だけではなかった。
その一方で、これまでに見たことがない形状ゆえに、当然「リスクが大き過ぎないか」とか「慎重に考える必要があるのでは」という懐疑的な声が上がったのも事実。社内でも意見は真っ二つに分かれた。

WAVE DUEL PRO

選手の声に耳を傾け改良を重ねる

 しかしながら、最も大事なのは、このシューズに足を入れるアスリートの声に他ならない。ミズノがサポートしている実業団や大学の選手や、自己ベストを目指し日々ランニングに励んでいる一般ランナーチームにまで、多くのアスリートの声を集めに現地に足を運んだ。
「もちろんこれまでの開発の中でも、アスリートの声に耳を傾けるということは当たり前にやってきたことです。ですが、今回のプロジェクトでは、その規模を拡大し、細かく意見を聞いていきました。良いって言ってくださる方もいれば、もちろん、こんなんじゃダメだという声もありました」
それらのフィードバックを集めて、改良を重ねるプロセスは地道だったが、次第に評価してくれるランナーの数は着実に増えていった。
そして、“ランニングの効率性”と“ふくらはぎ周辺の筋や腱の負担を軽減すること”という相反する要素を両立させたミズノの新機能“SMOOTH SPEED ASSIST*”を実現した。

 そして、まずはこの機能を搭載したスピードシューズの第一弾として、WAVE DUEL PROとWAVE DUEL PRO QTRを世に送り出した。この2足のシューズは、フォアフット(前足部)接地やミッドフット(中足部)接地のランナーに特化したシューズだ。このように、いきなり履く人を限定するようなシューズを発売したのは、この機能やコンセプトを分かりやすく打ち出すためでもあった。
「10人いれば10人全員にこのシューズに履き替えてもらう必要はなく、まずは10人中1人でも選んでくれる人がいれば良いと思っています。その上で、今後発売されるシューズは、中足部が厚くなる位置や、踵部の角度を変えるなどSSAをアレンジし、いろんなタイプのランナーにアジャストしていければいい。そして、10人中1人だったのが、2人、3人、4人…と増えていけばいいと思っています」

 青井がこう話すように、今後はSMOOTH SPEED ASSIST*搭載のランニングシューズのラインナップが増えていく予定だ。

 

*下腿三頭筋の伸張性収縮の一般的な指標とされる「足関節底屈トルクの負の仕事」を、社外被験者を用いた実験により測定。レースペース走行時(時速16~20km)にスムーズスピードアシスト機能搭載商品と、非搭載商品(自社)間での「足関節底屈トルクの負の仕事」の値を比較し、搭載品において値が低減されることを確認。
*効果や感じ方には個人差があります。

SMOOTH SPEED ASSIST搭載のランニングシューズ

世界中のアスリートに選ばれる日までSMOOTH SPEED PROJECTは続く

 多くのアスリートにヒアリングを重ねていくうちに、青井には気づいたことがあった。
「多くのランナーにとって、ご自身で選んで今履いているシューズが必ずしも完璧だとは思っていないんだな、という印象を受けました。それでも、そのシューズのデメリットを分かっていても、それよりも自分にもたらされるベネフィットを優先している選手が多いんです。だからこそ、我々にもまだまだやれる余地はあると思いました。

 日本国内に限らず、世界中のアスリートが、パフォーマンスを向上させるためにミズノを選んでくれるその日まで、“SMOOTH SPEED PROJECT”は続いていきます」

 まずは2足のシューズを発表したが、この先も、多くのアスリートに最適な1足を提供するために、プロジェクトチームの研究開発は続く。

企画開発者 青井俊輔さん