SMOOTH SPEED ASSIST 誕生ストーリー Vol.03 アスリートに選ばれる”ええもの”を作りたい

“SMOOTH SPEED ASSIST開発ストーリーVol.03となる今回は、「選手たちにとっての“ええもん”とは何か。」自らへのそんな問いかけを大事にしてきた企画開発の青井俊輔のストーリーを紹介する。
ランニングシューズ界に起こった地殻変動を目の当たりに、青井が逆境に立ち上がった。

小学から大学までサッカー部で、サッカーシューズを作るためにミズノに入社し、トップ選手のサッカースパイクの企画を担当する。マーケティングを経て、ランニングシューズの担当に。THE MIZUNO ENERZYなど革新的なシューズを世に送り出している。

10年後も“ええもん”であり続けるとは限らない

 青井には、ミズノに入社して以来、ものづくりに関わる身として大事にしている言葉がある。
それは、ミズノの創業者の1人、水野利八の『ええもんつくんなはれや』という言葉だ。

「10年前に作った“ええもん”は、今でも“ええもん”であり続けているとは限りません。ギアを使う選手が変われば“ええもん”の定義も変わってくると思うので、アスリートの声に耳を傾けることが大切だと考えています。それが、ミズノの物づくりの本質にある。自分たちが作っているものに慢心することなく、常に“良いものは何か”を考え、選手たちと一緒に作り続けていくことを心がけています」
また、自分の大きな目標には、やっぱり“ミズノを良くしたい”という思いがありました。」


 そんな思いが根底にあった。

ランニングシューズ界の地殻変動。逆境に立ち上がる

 もう1つ、世界のランニングシーンが、厚底レーシングシューズの登場により大きな変化を遂げたことも、青井のチャレンジ精神に火をつけた。
「日本国内でも海外の市場でも、ミズノは一定の存在感を放っていた時期があったんです。それが、“地殻変動”と呼べるような大きな市場の変化が起こって、そうではない状況になっているのを目の当たりにしました。その当時、私はグローバルのマーケティングの部署にいたのですが、ランニングシューズの部門が大変そうだなって思う反面、大変なことにトライしたほうがいいんじゃないかって思ったんです。

 今までのものづくりの考え方では太刀打ちできないような地殻変動が起きている。“どんどん新しいことをやろう”と考えている自分のような人間がかき回していって、新しいものを作りたい。自分がこれまでに培ってきたものを駆使し、全力でぶち当たりたいと思いました」


 とはいえ、陸上競技やランニングに関しては素人。ランニングに熟知したメンバーに囲まれているので不安はなかったものの、自分自身も理解を深めようと思った。そこで、まずは自分自身が走り始めることから始め、毎日ランニングをすることが人の人生にどんな影響を与えるのかを探った。
さらには、アスリートや、小売店の販売員といったランニングに関わる人に積極的に話を聞きに行き、競技への理解を深めていくことに時間を割いた。

企画開発者 青井俊輔さん

選手たちに選ばれなかった悔しさから“SMOOTH SPEED PROJECT”が発足

 そんな折、衝撃的な出来事があった。それは2021年が始まってすぐのこと。正月恒例の大学駅伝に出場した選手たちが履いていたシューズのシェア率がほぼ1社の独占状態で、ミズノのシューズは1%台とかなりの少数だった。ほんの5年前は約36%と最も高いシェア率を誇っていただけに、その事実にショックは大きかった。

 衝撃を受けたのは、青井だけではなかった。
「正月休み明けに出社すると、みんな同じことを思っていたんですよね。

 選手たちが人生を賭けている舞台で、自分たちが作ったギアが選ばれなかったということは、“ええもん”って思われていないということ。それが悔しくてしょうがなかったですね。もちろんビジネス的にも、このままではダメだっていう危機感もありましたが。その悔しさが、大きな原動力になりました」

 このような経緯があって、“SMOOTH SPEED PROJECT”というスピードランニングに関するプロジェクトが立ち上がった。

WAVE DUEL PRO