最速を科学する。新機能SMOOTH SPEED ASSIST搭載の2モデルが登場

最速を科学する。
新機能SMOOTH SPEED ASSIST搭載の2モデルが登場

最速を科学する。新機能SMOOTH SPEED ASSIST搭載の2モデルが登場

 ミズノの新機能を搭載した新しいスピードシューズ、WAVE DUEL PRO(ウエーブ デュエル プロ)とWAVE DUEL PRO QTR(ウエーブ デュエル プロ クオーター)。これらの新作シューズは、踵部分が大胆にカットされ、中足部が一般的なシューズよりも大きく膨らんだ形状になっており、見た目にも斬新なデザインにした。
 この特殊なソール底面の形状こそが、当社が開発した新機能“SMOOTH SPEED ASSIST(スムーズ スピード アシスト)”である。見た目と同様に、これまでにないスピードランニング体験をランナーに提供するために開発した。

【SMOOTH SPEED ASSIST 開発背景】
スピードランニングにおけるスムーズさとは何か?

 「この数年間で、フルマラソンの世界記録をはじめ、世界中の多くの記録が塗り替えられており、スピードシューズに地殻変動が起きています。当社は、これまでにもスピードランニングに関して研究開発を進めてきましたが、この数年間の状況を踏まえた上で、スピードランニングにおけるスムーズさとは何かを考え直すべきなんじゃないかと考えました」
 グローバルフットウェアプロダクト本部 企画部 ランニング・トレーニング企画の青井俊輔がこう話すように、ミズノ社内のあらゆるエキスパートが様々なアイデアを持ち寄り、スピードランニングにおけるスムーズさとは何かを再検討。そして、“SMOOTH SPEED PROJECT”というスピードランニングに関するプロジェクトを立ち上げた。
 このプロジェクトのキーポイントとなったのが、いかにスタートからフィニッシュまで“効率が良いと考えられる足運び”で走り切れるかだった。

【 SMOOTH SPEED ASSIST の着眼点】
効率の良い着地パターンを最後まで維持するために

 ランニング時の着地のパターンは、主に、
・前足部で着地するフォアフットストライク
・中足部で着地するミッドフットストライク
・踵から着地するヒールストライク
の3パターンが存在することが知られている。

【 SMOOTH SPEED ASSIST の着眼点】効率の良い着地パターンを最後まで維持するために

 このうち、ミズノが様々な調査を行なっていくと、“効率よく速く走るには、ミッドフットストライクとフォアフットストライクが有効と考えた。
 しかし、一方で、これらの着地パターンは、ふくらはぎ周辺の筋疲労を促進しやすい側面をも併せ持つ。現実的には、スタートからフィニッシュまで効率のよい着地パターンを維持するのは簡単なことではなかった。
 この“ランニングの効率性”と“負担を軽減”という、相反する要素を両立させるべく、幾度ものトライ&エラーが繰り返され、アスリートへのヒアリングを重ねた。そして、新しく開発されたのが、SMOOTH SPEED ASSISTという機能だ。
 開発テストに協力したランナーからも好評だった。
 「これまでのシューズでは、レース終盤に差し掛かったときに、意識しようとしなければフォアフット接地を維持できませんでした。でも、SMOOTH SPEED ASSIST搭載のシューズでは、この機能のおかげで、意識せずとも自然とフォアフットになっていました」
 実際に、SMOOTH SPEED ASSIST搭載のシューズを履いてレースに出場したランナーからはこんなコメントが寄せられた。

【 SMOOTH SPEED ASSIST の特長】
力学でふくらはぎ周辺の筋腱への負担を軽減

 SMOOTH SPEED ASSISTの1つ目の特長は踵部分がカットされていること。これにより、自然なフォアフット、もしくはミッドフット接地の促進をサポートする。

【 SMOOTH SPEED ASSIST の特長】力学でふくらはぎ周辺の筋腱への負担を軽減

 また、従来のシューズでは、フォアフットで着地した後には踵が下がってしまい、この踵の落ち込みを防ぐために、ふくらはぎ周辺の筋腱に負担がかかっていた。この点をSMOOTH SPEED ASSISTは解決。拡張された中足部が接地後に落ち込んでくる踵部を支えてくれるので、フォアフット、ミッドフット走行時のふくらはぎ周辺の筋や腱の負担を軽減することができる。

【 SMOOTH SPEED ASSIST の特長】力学でふくらはぎ周辺の筋腱への負担を軽減

 「物を持つ時に、持つ位置によって重量感って変わってくると思うんです。それと同じことで、接地点の位置で負荷が変わってきます。ここに着目して、自然なフォアフット、ミッドフットを促進する形状をしつつ、接地点を中足部寄りにすることで、力学的に負担を軽減します」
 開発者の一人、梶原遥がこう話す通り、力学的には、作用点(地面から受ける力の中心=接地点)と支点(足首関節)の距離を、従来設計のシューズでのフォアフット、ミッドフット走行時よりも短くすることで、筋や腱に加わる力(負荷)が小さくなる。
 実際に、下腿三頭筋の伸張性収縮の一般的な指標とされる「足関節底背屈軸トルクの仕事」を、社外被験者を用いた実験により測定すると、時速20km走行時にスムーズスピードアシスト機能搭載商品と、非搭載商品(自社)間での「足関節底背屈軸トルクの負の仕事」の値を比較し、搭載品において値が低減されることを確認した。

 ※下腿三頭筋の伸張性収縮の一般的な指標とされる「足関節底屈トルクの負の仕事」を、社外被験者を用いた実験により測定。レースペース走行時(時速16~20km)にスムーズスピードアシスト機能搭載商品と、非搭載商品(自社)間での「足関節底屈トルクの負の仕事」の値を比較し、搭載品において値が低減されることを確認。※効果や感じ方には個人差があります。

【開発のヒント】
ミズノの短距離スパイクを応用

 開発のヒントとなったのは、ミズノの短距離用のスパイクだった。スピードランニングにおける理想とする足運びパターンと、陸上競技の短距離種目における足運びパターンには似ている点があると気づいたことが発想の起点になった。
 「スパイクを履いた時の足部の角度と、その足部の角度を支えるためのソールの構造、この2点に着目しました。もちろんスパイクのそのままの構造を採用してしまうと、筋腱の負担が大きくなりますが、長距離用に応用しました」
 開発者の梶原はこのように話す。
これまでにも、ミズノのスパイクは世界の陸上競技のシーンにおいて数々の輝かしい歴史を作ってきた。その短距離スパイクのDNAが、長距離のスピードランニング用のシューズにも受け継がれることになった。

 SMOOTH SPEED ASSISTは、まずはハーフマラソンや駅伝などに対応するWAVE DUEL PROと、ロードだけでなく10000mなどのトラックレースでも使用できる(※ワールドアスレティックス(世界陸連)のルールに則る)WAVE DUEL PRO QTRの2足に搭載される。

 「世界中のスピードレースがより白熱したものになること、そしてより多くのランナーが自己ベストを更新できること。我々が開発したこの新機能が、少しでもそこに貢献できればと願っています」(青井)

 今後は、目標とする距離に応じて角度と作用点(接地点)の位置を変えるなどし、より多くのシューズがラインナップされる予定だ。