伝統を守りつつ、 新たに「NEO」の 伝統も紡ぐ

1997年に誕生し、独自の設計理論に時代のテクノロジーを加えながら進化を遂げてきた「CHRONO INX」。
27年目にして新たに生まれたシリーズ、
その名も「CHRONO INX NEO JAPAN(クロノ インクス ネオ ジャパン)」。
今回は「CHRONO INX NEO JAPAN」の企画を担当した松木直人に話を聞きました。

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「最速」を追求した結果、生まれた2つの変化

今回の「CHRONO INX」は大きく変化したと聞いています。

もちろん「CHRONO INX」の名前がついていますから、「最速を追求する」という従来のコンセプトや良い部分はしっかりと踏襲しています。しかし、まったく新しいシューズとしてデビューしてもおかしくないほどの新しい技術や考え方が導入されています。名前に「NEO(ネオ)」と付けるくらいですからね。

大きく変化した部分について教えてください。

大きく変化した部分は2つあります。ひとつがソールの厚底化で、もうひとつがカーボンシートの採用です。

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ではまずソールの厚底化について教えてください。

これまでの「CHRONO INX」は「いかに軽いか」という軽量性と「いかに薄いか」という地面との接地感覚を重視して設計してきました。それを今回はあえてソールを厚くしています。いわゆる厚底化です。前足部ミッドソールに独自の高反発素材「MIZUNO ENERZY LITE」を搭載し、地面からより多くの反発をもらえることで、選手がより速く走れるようサポートします。また、単に厚くしたのみではなく軽量性にもこだわり、高反発素材のボリュームや位置に関しては、多くのサンプルを作って、実際に履いて走ったフィードバックをもとに改善を重ねていきました。

もうひとつのカーボンシートの採用について教えてください。

ミッドソールの上に今回新たに搭載したカーボンシートは、ミズノトラッククラブの飯塚選手や陸上シューズのクラフトマンなど、さまざまなスペシャリストのアイデアが形になったものです。これによりソールの曲げ剛性が向上し、選手の蹴る力をより推進力に変換できるようになりました。加えて、先ほどお話しした高反発素材「MIZUNO ENERZY LITE」を「点」ではなく「面」で押しつぶせるようになり、反発性の高さを余すことなく利用できます。さらに高速で走行したときの安定性向上にも寄与しています。特に200m走や400m走ではコーナーで体を傾けた時に起こるブレを最小限にして安定感をもたらします。また、直線を走る100m走でも1歩ごとに体はわずかながら左右にブレています。0.01秒の世界で戦う選手たちにとっては、そのブレを抑えることが勝敗に直結します。

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選手の感覚を超えた微細な調整で、さらに最速を追求

トップ選手からのフィードバックなどは参考にされましたか。

商品になるまで、飯塚翔太選手を中心にミズノトラッククラブの選手たちからさまざまなアイデアや要望をいただきました。そしてサンプルを履いていただき、そのフィードバックを製品に反映しています。特にカーボンシートについては、ほぼ全員が「カーボンシートがある方が良い」と。カーボンシートがないと高反発素材のある一点だけが沈むようなことが起こり、それを敏感に感じていたのが印象に残っています。

「CHRONO INX NEO JAPAN」の開発で最も難しかった部分はどこでしょうか。

「CHRONO INX」が持つ伝統を守りながら、いかにアップデートさせるかという点ですね。先述した2点以外にも細かい点を数多く変更していますが、従来の「CHRONO INX」を使用していた選手の中には、ソールのピンやイザナステープの位置、スケルトンアッパーの形状などは大きく変えないでほしいという声があったのも事実です。ピンやテープの位置を少し変更したサンプルを履いてもらうと、選手はその変化を認識するほど感覚が繊細なんです。それでもミリ単位の位置調整を行いながら、これまで以上のフィッティングやホールド感の向上を追求しています。

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「CHRONO INX NEO JAPAN」への思いをお聞かせください。

今回の「CHRONO INX NEO JAPAN」は、これまで説明した機能面のアップデートもそうですが、加えて、開発の初期段階から選手たちの強い要望に後押しを受け、今ここに製品として存在することもポイントです。選手たちの要望がつまったこのシューズがこれまでの「CHRONO INX」と同様に、選手たちによって育てられ、伝統をつなぎつつ、「CHRONO INX NEO JAPAN」としてまた新たな伝統を作っていくことを願っています。

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写真:陸上シューズ 企画担当 松木 直人