精密さを突き詰める ピストル射撃競技のルールと魅力

ピストル射撃とは、ピストルを使用し、固定された電子標的に弾を発射し、60発の弾を撃った合計点数(最大600点=10点×60発)を競います。ピストルとは片手で持って打てる小型の銃を指し、日本語においての拳銃と同義とされています。 競技としては銃器の発達とともに15~16世紀のヨーロッパを中心に始まったといわれており、現在国際大会では参加国数が陸上競技に次いで多く、世界ではとても人気の高いスポーツです。

ピストル射撃の撃ち方は、立った状態で片方の手で銃を構える射撃姿勢「立射片手射(りっしゃかたてしゃ)」で行われます。男子は、「50mピストル」「25mラピッドファイアピストル」「10mエアピストル」の3種目※1、女子は「25mピストル」「10mエアピストル」の2種目がありますので、それぞれの詳細を紹介します。

※1 大会によっては25m競技と「10mエアピストル」のみの場合があります。

男子「50mピストル」

「50mピストル」は22口径の拳銃を使用します。ピストル競技では最長距離なうえに、競技時間は1時間30分で、長時間に及ぶ集中力の持続と正確な射撃が要求されます。

男子「25mラピッドファイアピストル」

「25mラピッドファイアピストル」は、22口径の連発式拳銃を使用し、真横に並んだ的に向かって決められた秒数内に弾を撃つ競技で、8秒射:5発×2、6秒射:5発×2、4秒射:5発×2の合計60発の弾を撃った合計点数を競います。競技は2日間で実施され、初日の結果が2日目の競技前に発表されるため、リードを守る上位選手と、それを追いかける選手の緊張感が他の種目にない魅力となっています。

女子「25mピストル」

「25mピストル」は、22口径の連発式拳銃を使用し、1つの的に向かって5分間に5発×6回30発の精密射撃、3秒間現れ7秒間隠れる的に対して5発×6回30発の速射射撃、合計60発の弾を撃った合計点数を競います。やや変則的なルールで、選手の得手不得手によって変わる点数状況には目が離せません。

男子・女子「10mエアピストル」

「10mエアピストル」は男女ともに同じルールで、エアピストルを使用し、1つの的に向かって60発の弾を撃った合計点数を競います。競技時間は1時間15分となっており、集中力と精密さが必要です。また、この種目は男女1ずつがチームを組む、ミックス種目が存在します。

「10mエアピストル」の練習風景

ピストル射撃で使用する用具について紹介します。

銃器

ピストルと呼ばれるもので、空気を圧縮して弾を打ち出すエアピストルと、火薬を使って弾を打ち出すピストルが存在します。それぞれエアピストルが「10mエアピストル」、ピストルが「50mピストル」、「25mピストル」、「25mラピッドファイアピストル」で使用されます。また、グリップ部分は木製のため、選手個人の手の形に合わせてカスタマイズが可能です。しかしこれらの銃器を所持するには、資格や要件を満たす必要があり、使用も厳しく制限されています。

グリップがカスタマイズされたピストル

エアピストル用の弾は鉛で出来ており、ペレット弾(空気銃弾)と呼ばれ、独特な形状をしています。火薬は使用しないため殺傷力はほとんどありませんが、それでも使用後は衝撃で形状が変るため再利用は出来ません。火薬を使用するピストル用の弾は弾頭と火薬の入った薬きょうから成っています。

火薬の入ったピストル用の弾

種目によって、的の大きさは異なります。距離は種目によって50m、25m、10mの3つに分かれ、的の大きさは「50mピストル」「25mピストル」の種目では直径が50cm、「10mエアピストル」の種目では、直径が15.55cmとなります。点数は、機械が自動で測定します。

左:25mピストルの標的 右:50mピストル及び25mピストルの標的

左:10mエアピストルの標的 右:使用する弾や薬きょう

服装

薬きょうの跳ね返りによってやけどなどの危険性があるため、膝上15cmより短いパンツとノースリーブの服装は安全上、着用が禁止されています。また、同じ理由でゴーグルを着用する選手や、ピストルを使用する場合の大きな射撃音を遮断するためにイヤーマフを装着することが一般的です。

今回は特別に、日本代表として活動する武内響選手、山田聡子選手、エミール・ドシャノフコーチに競技の魅力や2024年の意気込みを伺いました。

「25mラピッドファイアピストル」日本代表の武内選手

Q:ライフル競技の魅力を、選手&観客目線でそれぞれ教えてください。

A:ラピッドファイアピストルは競技中に8秒,6秒、4秒の決められた時間にそれぞれ5発撃ちます。ペースを変えないといけないし、スコアも出さないといけない難しさはありますが、だからこそうまくはまって好スコアを出せた時の嬉しさはすごいですね。観客目線だと4秒射は見ごたえがあります。1発に1秒もかけられず、しかもその前の8秒射、6秒射の結果次第ではものすごいプレッシャーがかかります。その分一挙手一投足に目が離せないですね。

Q:競技を始めたキッカケを教えてください。

A:もともとは映画に出てくるガンアクションをかっこいいな~と思っていました。その影響で、高校に入学したタイミングで偶然あった射撃部に入部してみたのがきっかけです。そこから今までを振り返って、今大切だなと思うことは、いかに射撃動作を自動化するかということです。始めてすぐは点数も出ないので、射撃に興味のある人は積み重ねを大事にして、自動化を意識してみてください。

Q:2024年の、日本代表選手としての意気込みを教えてください。

A:4年に一度の大舞台に出たいという思いが強いです。その先のメダルを目標に頑張りたいですね。

「10mエアピストル」、「25mピストル」日本代表の山田選手

Q:ライフル競技の魅力を、選手&観客目線でそれぞれ教えてください。

A:選手としては、体格や身長に左右されにくい部分は魅力だなと思います。また、ピストルは特に服装なども身軽で、自分の体を存分に使って競える点が他の競技と比べてもいい点だなと感じています。
観客としては、選手が打つたびにスコアが確認できるので、選手の動きなどを見つつ、点数と連動する選手の表情などに注目してもらえるとより楽しめると思います。

Q:競技を始めたキッカケを教えてください。

A:高校入学時に友人に誘われたのがきっかけです。中学まではバレーボールをしていて、初めは射撃競技には全く興味がなかったんです。友人は途中で辞めてしまったんですが、その時良くしてもらっていた尊敬する先輩の前で私も辞めると言い出せず(笑)。高校2年のタイミングでエアピストルが国体種目になり、そこから1年くらいで国体の優勝も獲得できたのがターニングポイントでしたね。これから射撃競技を始める人は、1射1射の点数が見える分大変さもありますが、常に楽しむ気持ちを忘れずに頑張ってほしいです。

Q:2024年の、日本代表選手としての意気込みを教えてください。

A:代表チームとしても個人としても、1人でも多く4年に一度の大舞台で活躍したいと思います。そのためにもまずは目の前のことにしっかり集中して頑張っていきたいと思います。

ピストル射撃日本代表のエミールコーチ

Q:2024年の代表の見どころについて教えてください。

A:射撃競技は芸術的なスポーツだと考えています。それはメンタル、感情のコントロール、戦術的な部分、技術的な部分を兼ね備えているからです。そしてそれらを獲得するために、呼吸法の訓練など、日々特別なトレーニングをしてきました。そういったトレーニングの末、実際の競技では意識する部分、無意識で行う部分を織り交ぜ戦う美しいスポーツです。しかし反面、わずか数ミリの差で明暗が分かれてしまいますが、そのための準備は選手のみんながしてきました。4年に一度の大舞台で選手たちが活躍できるよう注目して見ていてください。

ピストル射撃競技への理解や興味は深まったでしょうか?ミズノはオフィシャルスポンサーとしてピストル射撃日本代表を応援しています。これを機に少しでも興味が湧いた人は、一緒にライフル射撃日本代表を応援しましょう!