メンタルトレーニング:自分より上手い選手とは、負ける気で試合をしてしまう

メンタルトレーニングイメージ

<指導者であるお母さんからのお悩み>
シングルス(硬式テニス)の試合で、自分が勝てる相手には強気で試合運びができるのに、自分よりランキングが上やシードのついた選手との試合には、コートに入る時から、負ける気で試合をしてしまう子供に対してのメンタルトレーニングを教えてください。

<回答>
こんにちは。しつもんメンタルトレーニングの藤代圭一です。
僕たち大人の親心からすると、「勝てる」とイメージできる対戦相手だけでなく、格上の相手にも臆することなく積極的にプレーしてほしいものですよね。
どうすればランキング上位の相手にも積極的にプレーできるようになるのでしょう。
今回は3つのアイデアをお伝えいたします。

・勝つこと以外の価値にも目を向ける
・どんな言葉をかけるかを意識する
・イメージを最大限に活用する

◎勝つこと以外の価値にも目を向ける

少し気になったことは、お子さんが「勝つこと」に対し過度に価値を見いだしているのではないか、と感じたことです。
「勝てる相手」には強気にプレーし、「勝てそうもない相手」には弱気になってしまう。

質問者さんは、この違いをどうしてだと思いますか?それと同時に本人に、
「何か違いはあるの?」
「どうして、違いがあると思う?」
「(勝てそうな相手、勝てそうもない相手それぞれ)試合前にどんなことを考えてる?」
と問いかけ、ぜひ対話を深めてほしいのです。僕の勝手な推測ですと、もしかしたらお子さんは「勝たないと意味がない」と感じているのかもしれません。

スポーツと「勝敗」は切っても切れない関係であり、勝利を目指すからこそ、手に入れられることもたくさんあります。
けれど、勝つことの他にも、
「できなかったことができるようになる」
「より、テニスが好きになる」
「仲間との信頼関係が深まる」
などのスポーツにはたくさんの価値があり、スポーツをすることで得られることがあります。勝つこと以外の価値にも目を向けられるようにしましょう。

◎どんな言葉をかけるかを意識する

では、どうすれば「勝つことの他にある価値」にも気づくことができるのでしょう。それには、僕ら大人の言葉や接し方に大きなヒントがありそうです。

自己啓発書などでよく紹介される「鎖につながれた像」のお話しをご存じでしょうか。
インドでは、
象を飼う時に、象の足をロープで杭につなぐそうです。象の力をもってすれば、
その杭を抜いて逃げることは簡単なのですが、象たちは杭を抜こうとしないのです。
象たちは、
子像の頃からその杭につながれています。そして、子像の頃、何度も杭を抜こうと試みても抜けなかったので、自分にその杭を抜くことはできないと思っているのです。
大人になって杭を抜く力がついているにもかかわらず...


「心が限界を作る」という寓話として
よく紹介されるのですが、杭を僕ら大人の「言葉」や「接し方」としても考えることができるかもしれません。

身の回りにいる僕たち大人が、子どもたち選手に対して、
「今日は勝ったの?負けたの?」
「どうして、あそこでミスをするんだ」
「きみにはまだ無理だよ」
というような「結果」ばかりを連想させるような言葉や接し方をしていれば、子どもたちは「結果がすべてなんだ」と思い込んでしまうかもしれません。

一つ一つは些細な言葉でも、子どもたちの脳裏に少しずつ刻み込まれ、小さな頃から杭につながれたゾウのように、
「勝てそうもない相手とは戦わない方が良い」
といった思考がつくられてしまう可能性もあります。

僕ら大人の関わり方が、子どもたち選手の思考や行動に大きな影響を与えます。
僕ら大人が使っている言葉や口グセ、接し方を見つめてみることです。
普段、どんな言葉をかけているのか。どんな接し方をしているのか。

客観的に自分自身を見つめることによって変えられることがあれば、少しずつ変えていきましょう。

◎イメージを最大限に活用する

勝てそうもない相手に消極的になってしまう理由として、「未来に対する漠然とした不安」も考えられます。

どんな未来が訪れるのかわからないことや、想像できないことに対しては、子どもだけでなく私たち大人も不安になるものですよね。
「ランキングが上だからきっと僕より上手だろう」
自分の不安の根っこを知り、相手のことを知ることができれば、戦い方に焦点をあて、そこにエネルギーと時間をかけることができます。

相手選手を知るために、
「どんな特徴があるかな?」
「どんなプレーが得意だと思う?」
「反対に、苦手なことは何があるだろう?」
と、一緒に考え、漠然とした不安を感じるだけで終わるのではなく、戦い方に焦点をあて、
「どんな戦い方をすればチャンスがあると思う?」
「そのためには、どんな練習が必要かな?」
「今日、できることは何がある?」
と、試合のための練習を積み重ねることによって、本番で実力を試すことができます。

他にもできそうなことはまだまだありますが、まずはこの3つを参考に、できることを小さく積み重ねていきましょう。