知られざるシューズサンプルの世界~バーチャルサンプルとはなんぞ~

サンプルとは、商品化する前に見本として作製されるものです。平面図だけでは気付かなかったことが、実物サンプルとして立体的に作り上げることで、さまざまな気付きが生まれるのです。それを元に修正を繰り返し、いざ商品化となります。

一見それほど難しくないように思うかもしれませんが、実はサンプルを一つ作ることは大量の時間とお金や労力がかかる、とても大変なことなのです。今日はその中でもシューズサンプルに注目。そして、その大変な実物サンプル作製を打破すべく始まった「バーチャルサンプル」の取り組みについて、ご紹介したいと思います!

バーチャルサンプル

■サンプル作製

モノづくりをする過程でサンプル作製は必須です。さまざまな商品の企画から始まり、開発・デザインを行った後に、いざサンプル作製!と、一言で言っても、材料調達や成型、輸送など実はたくさんの工程があります。そして1回作って完成ではなく、2度3度この流れを繰り返して作り直し、ようやく最終形が完成するのです。商品化するまでには時間もお金も大量にかかってしまうのが現実です。

環境負荷軽減の面でもなんとか実物サンプルを減らしたい…でもパソコン画面のイラストでは限界があるので試作は必要だ…
そこで目をつけたのが「バーチャルサンプル」でした。

まずはこちらの写真をご覧ください。

バーチャルサンプル

何の変哲もないランニングシューズの写真のようですが、実はこれこそが「バーチャルサンプル」なのです。

■バーチャルサンプルとは

バーチャルサンプルとは、実際のモノとして存在するサンプルではなく、実際のモノのように”見える”サンプルのことです。つまり、先ほどの写真も実際のランニングシューズを撮影したのではなく、パソコン画面上で作製したランニングシューズの画像データなのです。
影や光の入り方、質感が非常にリアルで、実物サンプルに引けを取りません。

バーチャルサンプルを作製するパソコン画面

バーチャルサンプルを作製するパソコン画面

ミズノでこのバーチャルサンプルの取り組みを始めたのは、シューズのデザイン部門でテクニカルデザイナーを務める中村敬さんです。中村さんは2019年春頃から自身で勉強を始め、半年後の冬の会議で初めてバーチャルサンプルをお披露目しました。社内の評価は上々。ちょうどその頃にコロナで対面の会議が開催できなくなってしまい、バーチャルサンプルの導入が後押しされることになったのです。

シューズのデザイン部門でテクニカルデザイナーを務める中村敬さん

シューズのデザイン部門でテクニカルデザイナーを務める中村敬さん

■バーチャルサンプルのすごいところ

先に書いたように、バーチャルサンプルにすることで、時間やお金、材料の無駄を大幅に削減することができます。
今まで一つの実物サンプル作製に1~2カ月かかっていたところが、バーチャルサンプルを導入することにより一週間ほどで作製可能になりました。さらに、少しの色変更などであればその場で修正できるので、商品検討の会議中でも変更ができ、商品決定がスムーズになりました。

バーチャルサンプル

一方向からだけではなく、色んな角度から見ることもできます。一部分の色変更や、質感の変更も簡単にできるようになりました。

  • ミズノのフォーム診断で走り方を診断している様子
  • ミズノのフォーム診断で走り方を診断している様子
  • ミズノのフォーム診断で走り方を診断している様子

中村さんいわく、「今まで挑戦できなかった斬新なデザインにも挑戦できる。それがデザイナーとして一番大きいメリットかもしれません。」とのこと。もちろん実際に履いてみた感覚や商品の耐久性を確認しなければならないので、実物サンプルの作製もなくてはならない工程の1つです。しかし、色やデザインをバーチャルサンプル上で検討できる分、シューズの機能面でのテストにより多くの時間や労力を費やすことができるようになったのです。サステナブルな取組としてはもちろんのこと、今後ミズノがより良いモノづくりをするためにも大きな一歩になったように思います。これからのミズノの新しいデザインに乞うご期待ください!

※文中のバーチャルサンプル画像はイメージです。