Interview : Shigeyuki Kunii of mita sneakers Vol.2
ブランドのルーツは勿論のこと、プロダクトの生まれた時代背景までを熟知し、スニーカーシーンにおけるご意見番として世界でその名を馳せる『mita sneakers』の「国井栄之」。スポーツブランドとしてのイメージが強いMIZUNOにおいて、ライフスタイル部門としてスニーカーシーンへ本格参入を図るMIZUNO1906が世界最高峰の審美眼にかなうかどうかが今後を占う一つの指針となることは言うまでもない。そんな国井氏のお膝元、上野を訪れ、MIZUNO1906の発足当時には語られなかったエピソードや、これから始まる取り組みについてざっくばらんにインタビュー形式で語っていただいた。
- シルエットや素材など毎年トレンドがありますが、2018年のスニーカーはどんなデザインに注目していますか
本質的な部分は変わらないんですけど、上澄みの部分で言えばツーリングに関しては、チャンキーなシルエットが受け入れられることが多くなるんだろうなと思います。今って追求するとある意味答えが分かり易くて、だからこそどこのブランドも同じような靴の作り方で、同じようなシルエットになってしまっていると思うんです。でも90年代って良くも悪くもデザイナーのアイディアが生かされていた時代で、今の時代で真剣に物を作ろうとしたら、そのデザインにならないでしょと思うものが多い。でもそういったものが、それぞれのブランドのアイデンティティだったり、その時代の空気感となっているなと。今やれと言われてもなかなか出来ないデザインだから、そのいなたさがかっこよくて受け入れられると思っています。今で言ったら、ダッドシューズやアグリーシューズと表現されると思うんですけど、そこは2018年に求められる部分なのかなと思います。かっこいいの概念が去年、一昨年とは変わってくるのかなと。
- スニーカーショップとセレクトショップ、扱われているスニーカーやお客様が求めている物に違いはあるか
単純にいうと、多分上から下を揃えるのがセレクトショップだと思っていて、スニーカーショップは下から上、もしくはスニーカー単体だけでいいのかなと思っています。スタイリングに馴染むデザインを求めているのがセレクトショップだと思いますし、スタイリングの中で映えるものを求めているのはスニーカーショップだと思います。
- 角度は違えどどちらもスニーカーを扱っているわけですが、トレンドに一貫性を感じますか
一貫したものはあると思います。なので物の見方が違うのかなと思っていて、例えばすごくデコラティブなデザインのものをファッションに取り入れようとした時に、それを外しに使う方がいて、僕らはガジェット的な見方で単体としてデザインが面白い、機能性があるとか、同じものでも見る角度が違うのかなと。
スニーカーショップの視点で言えば、“逆に”とか、“あえて”とか、大昔履いてたけど今になると新鮮に見えるから久々に履いてみようっていう感覚で90年代のデザインを見ていて。結局その年代のものが様々な理由でフィーチャーされたからムーブメントっぽく見えますが、選んでる理由はそれぞれでベクトルは違うのかなと思います。
- ライフスタイルカテゴリーとして発足したMIZUNO1906ではスニーカーショップとセレクトショップ、どちらの視点に重きを置くべきだと思いますか
僕はスニーカーをファッションで考えたことはないので、機能美と装飾美で選ぶとしたら基本的には前者です。コラボレーションをする時、上澄みのストーリーだけを語って、スニーカー本来の機能とか、時代背景を語らないことは一切しない。もともとあるものの延長線上でしかないので、ファッション軸でスニーカーを見ていません。
ものを作るサイクルとしてスニーカーでは新規開発に2年とか、ものによってはテクノロジーを入れたら3年もの時間を要するんです。そのサイクルでもの作りをしていくと、そもそもファッションのトレンドのサイクルには合わないんですよね。でもファッションコンシャスな人達は靴屋が作ったSMUがそこまでファッションのことを考えてなくて作っていたとしても、それを履きこなすスキルや器量がありますからね。僕らが想像する以上のスタイリングで履きこなしてくれる。
ファッションブランドのルックブックなどを見ても、スタイリストさん、カメラマンさん、メイクさん、プロの手が入ると全然違ったりするじゃないですか。想像もつかないようスタイリングでいてカッコイイみたいな。だからモノ作りにおいて、靴屋がファッションに対して迎合する必要はないと思っています。そのスニーカーを上手く履きこなしてくれるファッションコンシャスな方達が五万といるので。
- いよいよMIZUNO1906との取り組みがスタートしますが、現行のMIZUNOのスニーカーで一足を選ぶとしたら
『プロフェシー6』ですね。今の時代、全てが効率化で物事が進んでいる中で、利益を度外視して、プロフェシー6を真摯に作っているMIZUNOはいい意味で狂っていると思いますよ(笑)。でも、そこに惹かれたりするんですよね。ナードじゃないけど、モノの作り方が学者や研究者っぽいっというか。
100年後にMIZUNOで働く人たちに向けて、今の時代にできることを追求して、会うことがない未来のMIZUNOの社員のためにしっかりとレガシーを残しているというか、進化させているというか。 スポーツブランドの一番の魅力って、進化だと思うんですよね。進化を徹底的に追求しているMIZUNOのスタンスが好きですね。
- プロフェシー6にはそこが凝縮されていると
そうですね。商売だけで考えて、利益追求を重視する会社だったら“何やってんの?”ってなるようなプロダクトだと思うので。僕はそうゆうブロダクトにこそ惹かれますね。
- 今後MIZUNO1906に期待していることは
一番は継続ですね。
しっかりと認知されるまでには時間と継続が必要です。例えば、実のなる木をそのまま人の畑に植えるとかではなくて、まずは土地を開拓し、畑を耕して、種を蒔いて、水や肥料をあげて、長年手塩にかけてようやく収穫の時を迎えるわけです。スニーカーシーンの中でのポジションを確率するにも時間がかかります。
将来MIZUNOで働く人たちが、当たり前のようにスニーカー業界にあるMIZUNO1906を世の中の人達に伝えて行けるような礎をしっかり作っていって欲しいです。
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