今駅伝ではタイツ着用がブームになっている

駅伝シーズン真っ盛りですが、今長距離トップランナーのウエアが変化しているのにお気づきですか?実は今、太腿や腰を締め付けるタイツスタイルの選手が増えているんです。

■トップランナーにもタイツ着用のメリットを見いだせた

一般市民ランナーと違い、真冬でも長距離のトップランナーが着用するウエアと言えばランニングシャツとランニングパンツが定番でしたが、近年の長距離界ではそのスタイルに変化が出てきています。そこには速く走るための理由がありました。鍛え上げた肉体を持つ長距離トップランナーでも、着地の際の衝撃で、腰が左右にブレたり、太腿の筋肉の振動が起こります。そこで振動を軽減し、安定した走りができるタイツの開発が求められていました。

ミズノ㈱グローバルアパレルプロダクト本部で陸上競技ウエアを担当する美濃辺淳さんに聞いたところ、「一般市民ランナーが得られるようなメリットを、トップランナーに対しても理論的に立証し、データの裏付けも取ったことで、タイツを着用するメリットを見いだせた」と教えてくれました。

『BIOGEAR SONIC TIGHTS LD』の改良版を手にする美濃辺さん

『BIOGEAR SONIC TIGHTS LD』の改良版を手にする美濃辺さん

そこで完成したのが、2021年夏に発売した、長距離ランナー向け専用設計のタイツ『BIO GEAR SONIC TIGHTS LD(バイオギア ソニック タイツエルディー)』です。

2021年夏発売の『BIOGEAR SONIC TIGHTS LD』効率の良い走りをサポートするための設計

このタイツは、裏地に布帛素材を貼り合わせることで、その部位をサポートする設計になっています。しっかりサポートすべき腰周りや太腿部のサポート力を強くし、それ以外の部分はストレッチ性が高く伸びやすい構造となっています。美濃辺さんは「これにより腰回りが安定し、筋肉の振動が軽減でき、効率の良い走りに繋がる。酸素消費量約2.7%軽減するというデータも出ています」とこのタイツを履くことのメリットを強調します。

■選手の感覚と実証実験による裏付けでより良いモノへ

トップランナーにもタイツ着用の効果を実感してもらい、タイムの向上に役立つことが少しずつ浸透してきたことで、これから駅伝、マラソンランナーの多くがタイツスタイルに変わっていくと美濃辺さんは見ています。その中でも「全体を締め付けるタイプは他社にもあったが、骨盤をしっかり締めているのは意外になかった。骨盤をしっかりサポートすることで体幹が安定し、骨盤の前傾を促します。その結果脚運びがスムーズになり、ランニング効率が高くなる」と言います。
美濃辺さんは、『BIO GEAR SONIC TIGHTS LD』をより良いモノに改良していくため、そして長距離界で多くの選手に着用してもらうため、選手に意見を求めました。「練習でも着用するので、頻繁に脱ぎ着をすることから、より履きやすいように」と素材、サポートの手法を変更するなど、さらなる改良を加えました。夏場に学生トップランナーの合宿先を訪問し、実際にトップ選手に改良版をテストしてもらうと4割以上の選手から、‟(きつい練習の後半)普段より粘れる(スピードを維持できる感覚がある)“という声が聞けました。美濃辺さんは、さらなる手ごたえを感じていて「これからのマラソン、駅伝では、より多くの選手がこのタイツを履いてくれると思います」とトップランナーのスタイルの変化に期待しています。