陸上競技の選手の足元を支えるシューズクラフトマン。そのお仕事を覗いてみた!

今年も本格的な陸上競技のトラック&フィールドのシーズンが開幕しました。多くのトップ選手が走る、跳ぶ、投げるの自己ベスト更新を目指してスタートを切りました。そんな選手たちが安心して履けるシューズを手作りで作っているのが、ミズノテクニクス・山崎ランバード工場(兵庫県)のシューズクラフトマン・亀井晶です。
亀井は、学生時代の陸上競技の経験から、選手の要望をシューズの形状や構造に落とし込んで、選手に満足してもらえる一足を作ることができるミズノのシューズ作りのトップクラフトマンです。試合会場や練習先を訪問し、コーチや選手から話を聞いて工場で試作品を作り、また選手に履いてもらって意見をもらい、調整。その作業を何度も繰り返して、選手の足に合った一足が出来上がるのです。

飯塚翔太選手(左端)からシューズの感想を聞く亀井クラフトマン(右端)

飯塚翔太選手(左端)からシューズの感想を聞く亀井クラフトマン(右端)

愛知県の県立高校から鹿児島の鹿屋体育大学へ進み、大学まで短距離(主に400m)をやっていた亀井は、1992年にミズノに入社。14年間営業として西日本のお得意先を担当しました。そんな亀井に転機が訪れたのは35歳の時でした。ミズノに入社した時から、トップ選手のシューズ作りに関わりたいという思いはあり、夢を実現するには最後のチャンスと社内フリーエージェント制度に応募。クラフトマンとして国内シューズ工場であるミズノテクニクス・山崎ランバード工場でオーダーシューズを専門で担当することになりました。以来ミズノトラッククラブをはじめとする国内、海外のトップ選手のシューズを作り続けています。

勤務する山崎ランバード工場で作業をする亀井クラフトマン

勤務する山崎ランバード工場で作業をする亀井クラフトマン

陸上競技のスパイクシューズは主にソール(ピンがある下の部分)と足を覆う甲の部分(アッパーと呼ばれる)で構成されています。この甲の部分は、オーダーシューズの場合、それぞれの選手の足の形に合わせることでフィット感が高まります。100分の1秒、もしくは1㎝単位で勝負が決する陸上競技では、無駄なく地面に力を伝えることが求められるため、何より足にフィットしたシューズが求められます。

亀井クラフトマンはこの甲の部分を作る際、選手の足型をイメージしながら、生地を縫い合わせたり、ソールと接着したりする作業を行っています。頭の中にそれぞれの選手の足型や競技の時の動きがイメージできるようです。
例えばミズノトラッククラブで400mを専門とする佐藤風雅選手は裸足でスパイクを履くことから、甲部分の親指の付け根が擦れるのが気になるということで、布を一枚足して足あたりをソフトにしています。
このように選手の声を大切にしながらシューズを調整していきます。

佐藤風雅選手(右端)とシューズの感触をやり取りする亀井クラフトマン

佐藤風雅選手(右端)とシューズの感触をやり取りする亀井クラフトマン

2023年5月3日に行われた日本グランプリシリーズ「第38回静岡国際陸上」の走幅跳で6m75の自己ベストを更新して優勝した秦澄美鈴選手(シバタ工業)も亀井クラフトマンのシューズを履く選手の一人です。競技終了後、亀井クラフトマンは早速秦選手にヒアリングを行いました。秦選手は日本記録の更新を目指しており、シューズで少しでも貢献したいということで、亀井クラフトマンは「より助走でスピードが出るように工夫している」と説明してくれました。秦選手も今シーズンは好調な跳躍を続けてくれており、今後の活躍が期待されます。
秦選手をはじめ、多くの選手のシューズを作る亀井クラフトマンは「選手の好記録はもちろん嬉しいですが、何より選手が無事にゴールをすること、競技を終えてもらえることが一番嬉しいこと」だと言います。

秦澄美鈴選手(シバタ工業)と打合せをする亀井クラフトマン

秦澄美鈴選手(シバタ工業)と打合せをする亀井クラフトマン

普段は兵庫県のシューズ工場に勤務している亀井クラフトマンですが、年に数回、MIZUNO TOKYOとミズノオオサカ茶屋町で一般の方向けのシューズオーダー会に出張対応しています。直近ではMIZUNO TOKYOで5月27日(土)、28日(日)に行いますので、そのフィット感が味わいたいという方、ぜひこの機会に自分だけの一足を作ってみてはいかがでしょうか?
※オーダー会は予約制ですので、下記ホームページよりお問い合わせください。ミズノオオサカ茶屋町の予定もあります。

MIZUNO TOKYOでの作製会の案内

スポーツシューズオーダー会