ジョグのすゝめ / VOL.04 ジョグで土台を より強固なものに。 法政大学 長距離ブロック 武田 和馬

 1年⽬から⼤学駅伝で区間上位の活躍を続ける法政⼤学の武⽥和⾺。駅伝やロード種⽬だけでなくトラックでも着実に記録を伸ばし、今やチームの主軸を担う存在だ。

年間の練習の6〜7割を占めるジョグ

 武⽥が⼤きく⾶躍を遂げることができたのは、ジョグで強固な⼟台を作り上げ、その上で質の⾼いトレーニングを重ねてきたからだ。

 

 「ジョグはかなり⼤事な練習だと思っています。
週に2回あるポイント練習(強度の⾼い⼤事な練習)以外の練習がジョグです。つまり、年間を通して6割、7割の練習がジョグということになります。
ポイント練習ももちろん⼤事ですが、その⼟台となるのが補強トレーニングやジョグであり、その⼟台がしっかりとした強固なものでなければ、その上にポイント練習や実戦を積み上げていくことはできません。強固な⼟台がなければ、試合でも結果が出ないし、質の⾼い練習をこなすこともできないのです」

ジョグのすゝめ vol.04

 ジョグに対して“ありきたりの練習”というイメージを持っている⼈もいるかもしれないが、練習の⼤半を占めるからこそ、実はジョグは⼤事な練習だといえる。

 

 武⽥がジョグに取り組む上で、⼤事にしているポイントは2つある。
  「1つは動きづくりという点。試合やポイント練習で良い動きをするための基礎的な動きをジョグで作ります。
もう1つは、基礎的なスタミナ練習という点。マラソンをやるにしても、トラックをやるにしてもベースになります。
この2点を普段から意識して取り組んでいます。」

 

 武⽥のハイパフォーマンスの数々は、ジョグに意識的に取り組んでいた結果とも⾔えそうだ。

各⾃ジョグでは、⽬的に応じて
ペースや路⾯などを考える

 法政⼤学の場合、ジョグは12キロが基本。朝練習で集団⾛として⾏う際にはキロ4分ペースで⾛っているという。⼀⽅、各⾃で⾏うジョグでは、⾃分で考えて取り組まなければならない。だからこそ、明確な⽬的意識を持って取り組むことが⼤事だ。

 

 「各⾃ジョグでは、ポイント練習の翌⽇などにはキロ5分から4分半のゆっくりめのペースで⾛ります。疲労を抜きつつも、距離を踏むのでスタミナ作りになります。
逆に、ポイント練習の前などは、動きが重要になるので、テンポを上げて⾛ります。最初はゆっくりでもいいのですが、後半にかけてビルドアップし、本番の動きに近づけていきます。
朝練習は400mトラックで⾛っていますが、それ以外のフリージョグはロードで⾛ることが多いです。疲労を抜くことが⽬的のときは平坦なコースを⾛りますし、トレーニング⽬的のときは、不整地のクロカンコースやあえて坂道のあるコースを⾛り、脚⼒を鍛えています。」

ジョグのすゝめ vol.04

 武⽥は、1年⽬から活躍してきたとはいえ、最初から練習量をこなせていたわけではなかった。
  「学年を重ねるにつれて、1⽇に⾛る距離も伸びました。下級⽣の頃と⽐べると、1⽇あたり倍くらい⾛るようになったと思います。」
  こう話すように、下級⽣の頃と上級⽣になった現在とでは、明らかに1⽇の⾛る量が違う。武⽥はいかにして⾛る量を増やしたのか。それは、練習の前後にあった。

 

 「普段のジョグ⾃体はベースとなる距離は変わっていませんが、ポイント練習前後のウォーミングアップとクールダウンで⾛る量が1年⽣の頃と⽐較して倍に増えました。
普段の12キロのジョグの前にも、ウォーミングアップで2〜3キロは⾛っています。つまり、メニューとして提⽰されている以外の部分で、⾛る距離が格段に増えたのです。

ジョグのすゝめ vol.04

 アップで⾛る距離が増えた分、ポイント練習などの際には、脚の筋⼒的な疲労は多少感じることがあります。ですが、スタートする際に体温も⼼肺も上がっているので、いざ速いペースに切り変わったときに、うまく対応できるようになりました。
アップがそんなに⻑くなかった頃は、例えば、1000m×10本という練習では、最初の2本で⼼拍数が上がってこなくて、なかなか楽に⾛れないことが多かった。今はアップの時点で負荷をかけているので、1本⽬から本来の動きができています。ポイント練習やレースの⼊りから、良い動きができるという⼤きなメリットがあります。」

 

 ウォーミングアップを⼯夫したことで、たんに練習量が増えただけでなく、ポイント練習にもより効果的に取り組めるようになった。

ジョグにメリハリをつける

 チームのエース格の武⽥は、意外にも、ジョグでは誰よりも遅く⾛ることがあるという。もちろん速いジョグに取り組むことがあるが、こうやってジョグにもメリハリを付けることを⼤切にしている。その理由はどんな点にあるのか。

 

 「トップアスリートでも、毎⽇速いペースのジョグを⻑く⾏うのはとても難しいですし、疲労を抜く時も必ず必要です。つまり、20キロをキロ4分ペースで⾛る⽇もあれば、30分ゆっくり⾛る⽇があってもいい。そういうメリハリを付けることがケガの予防になりますし、疲労のコントロールにもなります。
僕はチームの中でも速いほうですが、ジョグでは⼀番遅く⾛ることもあるくらいです。

 

 ⾼校時代もジョグを重視する⾼校でしたが、僕⾃⾝は苦労していました。ジョグの距離が増えて貧⾎になり、3年間、なかなかうまくいきませんでした。毎⽇、キロ4分の速いペースでジョグをやっていて、⼒を抜いてジョグをすることが1⽇もなかったからです。
そんな⾼校時代の悔しさを⼤学では活かしました。
⼤学に⼊り“フリージョグ”という練習が増えたときに、“⾃分はどうすべきか”を考えました。そして、“速いジョグをすれば強くなる”という先⼊観を捨てて、あえてペースを落として⾛ってみたのです。その考えに⾄ったのは感覚的なものからでしたが、そうやってジョグにメリハリを付けた結果、1年⽬から駅伝で結果を残すことができました。
毎⽇を頑張りすぎずにオンオフを決めてジョグをするということは、トップアスリートでも、市⺠ランナーでも、共通して⼤事なことだと思います。」

ジョグのすゝめ vol.04