積み重ねた知見とチームワーク、そして『初心』がスーツを創造する

氷上工場 製造課 縫製担当
山本 紘恵 Hiroe Yamamoto(ミズノ テクニクス)

『阿吽の呼吸』がものづくりのスピード
を加速する

北京冬季大会でも活躍が期待される冬季競技種目の日本選手たち。ミズノ テクニクス株式会社の氷上工場で縫製を担当する山本紘恵は、スピードスケートやスキージャンプの日本チームなど、日本選手の活躍が期待される競技スーツを縫製しています。競技スーツづくりは、各メンバーの専門スキルの高さに加えてチームワークも大切です。
「スピードスケートのレーシングスーツを担当して10年以上になります。その間ずっとほぼ同じ企画開発メンバーでレーシングスーツづくりをしてきたせいか、彼らに全部を言われる前に言いたいこと、私が取り組むべき内容がなんとなくわかるようになってきました。こういうのを『阿吽の呼吸』って言うのかな(笑)」
そんな山本にとって、自身を高めてくれる存在として挙げたのが、2020年4月に入社したばかりの新人でした。
「高校を卒業したばかりの新入社員が、私のチームに配属されたんです。本格的にミシンを触るのも初めてで、縫い方はもちろん扱い方など、基本中の基本もすべて私が教えています。必死で理解して一日も早く成長しようとがんばる姿勢を見ると『私もがんばらないと』と思いますし、私自身も完璧に理解していないと教えられないので、改めて学び直す良い機会になっています。そういう意味では、新人の成長と私自身の成長の間に相乗効果があると言えるかも(笑)」
新人を教えたりアドバイスする時間は、忘れかけていた『初心』を思い起こす機会をくれる、と山本。
「新人に縫ってもらう際は『必ず表と裏の両方から生地を見て確認しようね』と指示をします。その時、ふと私も新人の頃はきちんと見ていたのに、今は裏まで見て確認していない時があることに気がついたんです。経験や感覚が磨かれていく中で、表を見れば裏がどうなっているかの想像ができるようになったからでしょうが、自分自身への過信は戒めないといけない。新人の存在が、選手たちのスーツづくりと向き合う姿勢を正してくれています」

選手一人ひとりにベストな
レーシングスーツを提供する

スピードスケートのレーシングスーツは、北京大会向けの新モデルを投入しています。これまでの五輪でも縫製を担当してきた山本にとって、新モデルはどのように映ったのでしょうか。
「“締め付けで姿勢を保持する”というコンセプトに変化はないのですが、実はパーツの縫い目が少し減ったことで縫製する箇所も減りました。そのため1着のスーツ縫製に要する時間も短くなり、極端な言い方をすれば私は楽になりました(笑)」
ただ、「今回のレーシングスーツは、テクノロジー以上に進化している自信があります」と語る山本の言葉には、これまで10年以上にわたって選手たちのスーツ縫製を担当してきた自負を感じさせるものでした。
「今回のレーシングスーツについては、過去の知見や各選手からの要望をあらかじめ反映させています。実は、スーツで気にするポイントや好みの着心地って、各選手ごとに違うんですよ。しかもその感覚はミリ単位の調整で変わるもの。これまでの知見や各選手ごとに過去の要望をあらかじめ反映させて仕上げることで、本番で最高のパフォーマンスを発揮してもらえるスーツの提供をめざします」
コロナ禍により、五輪直前の選手とのコミュニケーションはもちろんのこと、調整や修正の流れも少し変わるそう。
「どんな状況でも選手の要望をできる限りスーツに反映し、本番のレースに向かう選手にベストの状態のスーツを提供できるよう全力で取り組むつもりです」