
気持ちに余裕が生まれたことで、自然に
壁を乗り越えられた
走幅跳種目において、2019年に開催された第30回ユニバーシアード競技大会で優勝、2017~2019年の日本選手権3連覇など、日本走幅跳界のエースといえる橋岡優輝選手。一度日本記録を更新したことがある橋岡選手ですが、これまでの競技人生の中で一番高い壁は高校時代に8mの記録をめざした時の経験だったといいます。
「高校記録は当時から7m96cmで、『高校記録塗り替えをめざすなら、いっそのこと高校生初の8mジャンプをめざそう』と考えたんです。もちろん自分自身を客観的に見て、その想いを実現する力が備わっていると考えての設定でした。でも、『絶対に跳んでやろう、跳べるはずだ』と考えれば考えるほど、記録は伸びませんでした」
結果的に高校生初の8mジャンパーになるのはもちろん、高校記録の更新も叶いませんでした。
「今考えても跳ぶ実力とチャンスはあったと思います。ただ、欲に駆られてしまい、自身の内面に大きな壁を作ってしまった。しかもクリアできると考えて設定した目標をなかなか越えられないことで、自分のジャンプを見失いかけてしまいました。何を改善すれば8m超えのジャンプができるのか、改善の優先順位すらわからなくなってしまったんです」
自身が想像する以上に高かった8mの壁。ところが大学生になってすぐに、その壁を難なくクリアしてしまいました。
「高校生の時は『絶対に高校記録を作る!』という想いが強かった。しかし、8mを跳ぶ先輩選手がいる大学に進学した結果、8mの存在が壁ではなく単なる通過点だと思えるようになったんです。すると、そんな環境や想いが心に余裕を生んだのか、ほどなく8mの壁はクリアできました」