登山初心者が気をつけたい、山岳のプロが経験した失敗談や、
記憶にのこる感動秘話を紹介。

手配したお弁当が届かない!
持ち物で忘れて困るのがお昼のお弁当。ゲストの方が手配したはずのお弁当が、連絡の行き
違いで届かない事態に。自分や仲間のガイドのお弁当をかき集めてお客様へ提供し無事解決。のはず
が…結局、食べきれずに余ってしまうという失敗の積み重ねになりました。

湿った着替えのまま山歩き。
屋久島はとても雨が多く、山泊をする時は乾いた着替えをザック
に入れておくのが必須。しかし、なぜか前回の登山で使用済みの着
替えを再度持って行ってしまい、雨に濡れた着替えの重さと、湿っ
た服のまま山歩きする気持ち悪さでダブルショック。

しゃべりすぎで下山がギリギリに!
初心者ガイドの頃はゲストに楽しんでもらいたいという気持ちから、自分のあ
りったけの知識とポイントをご案内しようと懸命でした。そのせいで、下山時刻
が予定より遅れ、日没ギリギリになることも多々。そうした経験もあって、ガイド
として成長できました。

谷底で決死のレスキュー活動。
縄文杉の1泊登山の時、足を滑らせ谷底で動けなくなっている70代の女性に遭
遇。けがの状態が深刻で、ガイド2名体制で安全な場所への移動、レスキューの
要請、バイタルチェック、タープの設営などを実施。命に別状なく後遺症も残ら
なかったのが不幸中の幸いでした。

取材協力:
屋久島公認ガイド
日本山岳ガイド協会登山ガイド
日本カヌー連盟公認指導員yamakara 満園 純平
屋久島出身のガイドとして、宮之浦岳や永田岳の縦走、縄文杉1泊などの本格的な山泊ツアーから日帰り登山、お手軽なトレッキングやリバーカヤックまで幅広く案内している。

満園さんの
記憶に残るエピソード
自分のガイド人生の中で、縄文杉の前でプロポーズされたカップルがいらっしゃいました。海洋のお仕事をされている男らしい方で、一度仕事に出ると長く帰ることができない状況もあり、仕事から戻った長期休暇を利用して屋久島を訪れ“ここで決める!”と意気込んでのプロポーズでした。そんな頼もしい彼に応え、しっかりと受け止めて返事する彼女の“はい”の一言がとても感動的でした。

雨具を忘れ、ビニール袋でしのぐ。
「無雪期の山で一番大事な持ち物は雨具。」ふだん講習会でそう力説している
私が、人生で一度、雨具を忘れる大失態。ゲストを連れての2泊3日の山行中に
雨に降られ、45ℓのビニール袋に穴を開けてポンチョを作り、雨をしのぐこと
に。雨具の大切さをあらためて痛感しました。

下半身びしょぬれで風邪。
プライベートで訪れた九州宮崎の岩場での話。登山ルートの整備に行った際、8月の九
州で気温も高い日だったため、油断して雨具の上しか持たずに出発。結果、雨の中で1
日作業することになり下半身がびしょ濡れ、体が冷えて風邪を引いてしまうハメに。

取材協力:
(社)日本山岳ガイド協会認定 山岳ガイドステージⅡ
ジャパン・アルパイン・ガイド組合(JAGU)所属ミズノアウトドアアドバイザー 松原 尚之
法政大学山岳部で登山をはじめ、30年以上山の世界に生きてきた。南極やグリーンランドなどの極地、K2やマカルーといった高峰登山、ヨセミテのビッグウォール、フリークライミング、剱や黒部の冬山、日高の沢登りなど、私がこれまで味わってきた山の広く深い魅力を伝えたい。

松原さんの
記憶に残るエピソード
世界で2番目に高い山K2。8千メートル峰の頂上アタックでは、明るいうちにキャンプに戻ってくるために真夜中に出発します。真っ暗な中をヘッドランプで歩くのですが、天空はさながらプラネタリウムのごとき星の海。頭上から足の下まで星に囲まれ、さらに流れ星が次から次へと流れていく。「これは宇宙だ!自分は宇宙の中にいるんだ!」そんな思いにとらわれました。この体験は一生に一度のものだったと思います。
