精密さを突き詰める ライフル射撃競技のルールと魅力

ライフル射撃とは、ライフル銃を使用し、10mから50m先にある固定された標的を撃ち、精度の高さを競う競技です。
弾丸に回転を与えて命中精度を高めるため、銃身の内部にらせん状の溝が切ってある銃が、ライフル銃と定義されています。 銃器の発達とともに15~16世紀のヨーロッパを中心に始まったといわれており、現在国際大会では、参加国数が陸上競技に次いで多く、世界ではとても人気の高いスポーツです。

男女それぞれ、「50mライフル3姿勢」「50mライフル伏射」「10mエアライフル」の3種目※1があります。

※1 大会によっては「50mライフル3姿勢」、「10mエアライフル」のみの場合があります。

50mライフル3姿勢

「50mライフル3姿勢」は片膝をついた姿勢から撃つ「膝射(しっしゃ)」、うつ伏せの状態から撃つ「伏射(ふくしゃ)」、立った状態から撃つ「立射(りっしゃ)」の3つの姿勢から合計60発の弾を撃った合計点数(最大600点=10点×60発)を競います。3姿勢全てを通して1時間30分の長時間集中力を保たなければならず、「ライフルのマラソン競技」と呼ばれることもあります。また、すべての姿勢でいいスコアを出す必要があるため、バランスの良い実力が求められます。

50mライフル伏射

「50mライフル伏射」は、伏せた姿勢から60発の弾を撃った合計点数(最大654点=10.9点×60発)を競います。最も安定した姿勢で競技を行うため、他の種目と違って「いかにスコアを落とさないか」というプレッシャーと精密さが要求されます。

10mエアライフル

「10mエアライフル」は立った姿勢から60発の弾を撃った合計点数(最大654点=10.9点×60発)を競います。3姿勢の種目とは違い、立射という不安定な姿勢で60発を撃つことに加え、満点を取るには0.5mmしかない的の中央を狙わなければならないため、他の競技※2とは違う難しさがあります。

※2 50M種目の場合、的の中央は10.4mm

また、「10mエアライフル」では男女差が少ない射撃競技ならではの男女混合のミックス種目もあります。

「10mエアライフル」の練習風景

ライフル射撃で使用する用具について紹介します。

銃器

いわゆるライフルと呼ばれるもので、空気を圧縮して弾を打ち出すエアライフル(AR)と、火薬を使って弾を打ち出すスモールボアライフル(SBR)が存在します。それぞれARが「10mエアライフル」、SBRが「50mライフル3姿勢」、「50mライフル伏射」で使用されますが、所持には資格などさまざまな要件を満たす必要があり、使用も厳しく制限されています。

AR用の弾は鉛で出来ており、ペレット弾(空気銃弾)と呼ばれ、独特な形状をしています。火薬は使用しないため殺傷力はほとんどありませんが、それでも使用後は衝撃で形状が変わるため再利用は出来ません。SBR用の弾は鉛の弾頭と薬きょうで出来ています。

AR用の弾と競技の的

服装

実はライフル射撃競技では服装は指定されていません。ただ、ピストル競技とは違い、銃身も長く重量もあるライフルを持ったまま姿勢を安定させる必要があるため、専用のジャケットを着用する選手がほとんどです。重く硬い素材で出来ているため姿勢を維持しやすいという特長があります。

選手が競技中に着用する特殊なジャケット

今回は特別に、日本代表として活動する岡田直也選手、野畑美咲選手、ゴラン・マクシモビッチコーチに競技の魅力や2024年の意気込みを伺いました。

「50mライフル3姿勢」、「10mエアライフル」日本代表の岡田選手

Q:ライフル競技の魅力を、選手&観客目線でそれぞれ教えてください。

A:選手として結果が出たときの達成感はあるんですが、その過程が大事です。個人競技なので、自分の心と体の対話を重ねて自己を見つめる。そうして試合で1射1射を積み重ねていったものが結果になるイメージです。そこを突き詰めていきたいです。あまり一喜一憂しないので、僕の場合は試合中ほとんど表情が変わらないと思いますが、他の選手の場合は表情からその日の良し悪しが分かったりします。観戦するときはそういった選手の個性を、結果も含めて楽しんでもらえればと思います。

Q:競技を始めたキッカケを教えてください。

A:高校卒業までは水泳をしており、物心ついたころからスポーツに関わっていました。そのため、大学に進学するタイミングでもスポーツをしない選択は自分の中ではありませんでした。入学を機に、その環境でしか出来ない、なおかつ自分が全く触れてこなかったようなスポーツをしたいと思い射撃競技を始めました。始めた頃は大きな結果を出すことはできませんでしたが、2年生の時にチームが大会で春秋と連覇したときに得るものがあり、そこで一層射撃競技に対して魅力を感じるようになりましたね。これから始める人も、これまでの経験に縛られず僕のように大学から転向しても活躍できる可能性はありますので、何も気にせずにまずはチャレンジしてみて欲しいです。

Q:2024年の、日本代表選手としての意気込みを教えてください。

A:まずは大会で全力を出す、精いっぱいやるというところですね。2023年は世界大会で入賞したり上位に入ったり、安定して活躍できたので、24年も継続して結果を出したいと思います。

「10mエアライフル」日本代表の野畑選手

Q:ライフル競技の魅力を、選手&観客目線でそれぞれ教えてください。

A:選手目線では、0.1点でも順位が変わる中、銃のコンディションや気温などで変わる弾速の調整を行い、その中で結果を出す奥深さが醍醐味だと思います。観客目線では、大会のファイナルという最後の戦いで選手が順に脱落していくんですが、最後の3人になった時に会場の盛り上がりが凄くて、緊張感があってスリリングなので、注目して見て欲しいです。

Q:競技を始めたキッカケを教えてください。

A:たまたま私と姉が入学した高校で、父が射撃部の顧問をしていました。姉が先に始めて、その影響で私もというのがきっかけです。始めてから順調にスコアが伸びて行って、試合にも出るようになり、レギュラーとしての責任を感じることが競技を続ける原動力でした。大学生になった今は、「行けるところまで行ってみよう」という気持ちが強いですね。射撃競技はとにかく継続することが大切なので、それを忘れず自分なりのルーティンを作って、是非皆さんも射撃を楽しんでください。

Q:2024年の、日本代表選手としての意気込みを教えてください。

A:4年に一度の大会というのは、やっぱりみんなが目指す何かがあるのだろうと、その場に自分も出てみたいと思っています。まずは出場権の獲得のために、経験を積んで頑張ります!

ライフル射撃日本代表のゴラン・マクシモビッチコーチ

Q:2024年の代表の見どころについて教えてください。

A:代表の選手たちは非常に献身的で、練習に意欲的に取り組むいい選手ばかりです。2024年は4年に一度の大舞台がありますが、すでに出場を決めている岡田選手の他にも、50m競技の平田選手は戦える力を持っていますし、島田選手、清水選手はここ最近本当によくやっています。ベテランと若手が混在するチームなのでバランスが非常にいいのもポイントですね。日本代表の活躍と共に、観戦では決勝が非常にワクワクする見どころなので、ぜひ皆さんも応援してください。

ライフル射撃競技への理解や興味は深まったでしょうか?ミズノはオフィシャルスポンサーとしてライフル射撃日本代表を応援しています。これを機に少しでも興味が湧いた人は、一緒にライフル射撃日本代表を応援しましょう!