ええもんつくる”ヒト”
Vol.13「ええもん」づくりはスキージャンプへの恩返し
「ええもん」で、今日よりも、ちょっといい明日を。
100年以上にわたって受け継がれてきた「ええもんつくんなはれや」というミズノのDNA。“ええもん"をつくるヒトたちの仕事に対する向き合い方やこだわり、モノづくりに対する思いとともにお届けします。
1.「ええもん」づくりはスキージャンプへの恩返し
小学4年生からスキージャンプ競技を始め、大学1年の全国大会では2位を記録するなど、全国レベルの選手だった尾形。
そもそもスキージャンプを始めたきっかけとは──?
「札幌出身で、小学校のすぐ裏にはジャンプ台がありました。周りの子たちは野球やサッカーをやっていましたが、自分は『人と違うことをやってみたい』という気持ちがあったので、体験会に参加しました」
その体験会がのちに自身の人生を決定づけることを、当時の尾形は知る由もなかったのでした。
スキージャンプとの出会いから始まった「ええもん」づくりの軌跡をたどります。
2.選手時代に感じたスキージャンプの魅力
体験会からスキージャンプの世界に足を踏み入れた尾形でしたが、最初はジャンプ台から飛ぶのが怖くて「ずっと飛べなかった」と言います。
それでも練習を続け、1年ほど経ってようやく飛べるようになったときに感じた「ふわっと飛ぶ感覚」に楽しさを覚えた尾形。練習するほど長い距離が飛べるようになっていく達成感も相まり、どんどんジャンプ競技にハマっていったそう。
その後も日本で開催された国際大会のテストジャンパーを務めるなど、ジャンプ競技漬けの日々を送っていた尾形は、スキージャンプのスーツを調整していたミズノの前任者から声をかけられ入社を決意しました。
「元々スキージャンプに関わる仕事をしたいと思いながら大学時代を過ごしていましたが、まさかスーツの調整に携わるとは思ってもいませんでした。前任の方は30年くらいスーツの調整をされていて、ちょうど新しい人材を探していたタイミングだったようで……私に声をかけてくれたこともうれしかったですし、スーツの調整という仕事に就けることがすごくうれしかったです」
3.尾形にとっての「ええもん」
ジャンプスーツの調整という仕事に就いたものの、入社当時はミシンを触ったことすらなかった尾形。選手時代はジャンプスーツに対してそこまで注目することもなかったため、実際に仕事を始めてからは驚くことも多かったと言います。
「ジャンプスーツに関するルールが非常に細かいことも知らなかったですし、パターンを作る人、裁断する人、縫製する人、生産を管理する人など、1着のスーツが完成するまでに本当に多くの人が携わっていることも初めて知りました。それだけの思いが詰まっているジャンプスーツを選手のもとに届けるという大切な役割を自分は担っているので、担当者たちの思いを裏切らないためにも責任をもって取り組まないといけないと強く感じました」
そんな尾形が考える「ええもん」とは「信頼できるもの」だそう。
ここで言う「信頼できる」要素とは──?
「『ミズノが作っているジャンプスーツ』であること。モノとして『良いもの』は良い生地や良いパターンで作ることができますが、『信頼できるもの』は携わる全員が『ええもんを作る』と思わないと実現できません。そういう意味でも、担当者が全員『ええもんを作る』という思いで作っているのが『ミズノのジャンプスーツ』ですから、信頼されるに十分であると信じています」
さらに、「信頼できる」要素はもうひとつあると言います。
「選手たちに私自身を信頼してもらうこと。ジャンプスーツを信頼してもらうためにも、まずは私自身が『尾形にジャンプスーツを任せたら大丈夫』と信頼されるように心がけています」
4.「ええもん」を作る上での強み
選手たちから信頼されるという意味では、自身もスキージャンプ選手だったことは大きな強みになっています。
「元選手だったからこそ、選手のこだわりや言いたいことをくみ取ったり、逆にこちらが伝えたいことを選手目線に落とし込むことができていると思います。ただし……意見を聞くのはもちろんですが、要望通りに作るだけでは良いものができないと私は思っていて。作り手としての思いや意図もしっかり話して理解してもらうことを忘れないようにしています」
一方で、見知った仲だからこそ気をつけないといけないこともあると言います。というのも現在、スキージャンプの日本人選手を担当しているという尾形。その数は300人近くに及ぶそう。
そういったまなざしは、私生活にも共通しています。
「現在、日本でジャンプスーツを製造しているメーカーはミズノ1社なので、公平性を保つことが重要です。例えば一部の選手だけに注力してしまうと、全体のバランスが崩れてしまう可能性もありますから。日本で唯一ジャンプスーツを作り続けている会社の思いを背負いながら、ジャンプ競技を支えていかないといけないという責任感があります」
5.仕事する上での原動力
重責を担いながら、信頼を得るために自身を磨き続ける尾形。そんな彼の背中を押すのは「ジャンプ競技への恩返しの気持ち」でした。
「ジャンプという競技にここまで成長させてもらいましたから、今度は自分がジャンプ競技に恩返しをしたいという気持ちで働いています。今はジャンプスーツの調整をメインにしていますが、『もっとこういう風にスーツを作りたい』と思うこともあるので、将来的には開発寄りの立場で仕事をしたいとも思っています」
ジャンプ競技の未来も見据える尾形ですが、まずは来年の国際大会に集中して、恩に報いるべく全力を尽くしているとのこと。
「日本の選手が金メダルを獲るところを見たいですね。そのためにも『ええもん』を作って、現地で最後までしっかりと仕事をしたいと思います」