ええもんつくる”ヒト”
Vol.15 限りなく「手」に近づく道具を超えたグラブ作り
「ええもん」で、今日よりも、ちょっといい明日を。
100年以上にわたって受け継がれてきた「ええもんつくんなはれや」というミズノのDNA。“ええもん"をつくるヒトたちの仕事に対する向き合い方やこだわり、モノづくりに対する思いとともにお届けします。
1.限りなく「手」に近づく道具を超えたグラブ作り
小学2年生から野球を始め、高校時代には県大会ベスト4に進んだ早川。中学生のときから「大好きな野球の世界で用具を作る仕事をしたい。できればグラブを作る仕事に関わりたい」と考えていたそう。
「当時住んでいた家の近くに波賀工場で働いていた社員がいて、その人から『プロ野球選手のグラブを作っている』と聞き、自分もそこで働いてプロ野球選手のサポートがしたいと思うようになりました」
グラブに魅了された彼が「究極のグラブ」を目指す軌跡をたどります。
2.学生時代に感じたグラブの魅力
バットやスパイクといった道具もある中グラブに目を向けたのは、グラブという道具への愛着があったことも理由のひとつだといいます。
「野球の道具の中でも、グラブを特に大事にメンテナンスしていた記憶があります。試合で使っていくうちに形が変わっていって、自分の手に革がフィットしていくことに魅力を感じ、どんどん愛着が湧いていったんです」
3.グラブ作りに携わって驚いたこと
希望通りにミズノでグラブを作る仕事に携わることとなった早川ですが、入社当時はグラブに関する知識がまったくなかったそう。別注グラブの製造ラインでひも通しや仕上げ、縫製などの各工程を経験し、計12年をかけて技術や知識を蓄えていきました。
「多くのことを先輩方に教えていただく中で驚いたのが、『同じモデル、同じ革で同じ人が作っても、まったく同じグラブができあがることはまずない』ということでした。使用する原材料が天然の牛の革なので、革の色が違うだけでも硬さが変わってくるんです。まったく同じグラブを作ることが難しいのは当然ですが、『いかに同じものに近づけていけるか』を追求する奥深さに興味が尽きず、今に至ります」
4.早川にとっての「ええもん」
別注グラブの製造ラインで経験を積んだ早川は現在、プロ野球選手のグラブの製造、試作開発業務、品質管理業務を担当しています。
「プロのグラブ作りに日々力を注いでいるのはもちろんですが、さらに、プロへのヒアリングや球団への訪問を通じて、選手から出る意見や要望をできるかぎり拾い上げるようにしています。そうした声を一般のお客さまに届けるためにも、自分の置かれている立場としては『プロの声が反映された、新たな価値のあるグラブを届けること』が重要な役割であると考えています」
例えば、伊藤大海選手をはじめとしたプロたちの声を反映した「SPEEDREVO(スピードレボ)」のようなグラブの開発・改良などを行なっているとのこと。
そんな早川が考える「ええもん」とは──?
「まるで体の一部であるような、違和感なくストレスを感じさせないグラブが『ええもん』だと思います。自分の手ってなんのストレスもなく動かせますが、グラブをはめることで手の動きが制限されてしまいますから。僕が目指す『ええもん』は、できるだけ手の感覚に近い、はめているのにまるではめていないような、はめているのを忘れてしまうようなグラブです。
5.グラブ作りに関しての夢
革の種類や色、縫製の仕方などで変わる奥深いグラブ製造。そのなかで究極の「ええもん」を実現するのは難しいからこそやりがいも感じるといいます。あふれるほどの“グラブ愛”を語る早川は、自らの経験をできるかぎり還元していきたいと考えていました。
「どうやったらいいグラブを作ることができるのか。自分一人だけが知って満足するのではなく、製造ラインの人たちにもフィードバックしながら指導していきたいです。工場全体でよりいいものを作っていき、それがミズノの強みにもなっていく。ひいては、ずっと携わっている野球への恩返しにもなるのではないかと思います」
そして、もうひとつ。
「昔からグラブの形は変わっていませんよね。きっとこれまでもグラブの形を変えようと試みた人はいるでしょうが、結局今の形がベストなんだと思います。でも、いつかこの形を変えて固定概念を覆すようなグラブを作ることができたらいいなと思っているんです。手にはめた人が『このグラブで野球がしたい』とワクワクするようなグラブを作るのが夢です」