KICKS & ECHO vol.5 | lead artist DJ Licaxxx
2026.06.08 INTERVIEW

KICKS & ECHO vol.5 | lead artist
DJ Licaxxx

音を届け、その先につながる

音を選び、つなぎ、その場の空気を作る。LicaxxxにとってDJとは、コミュニケーションそのものだ。ルーツにあるUKカルチャーの感覚と美意識を、クラブシーンの中で磨き続けてきた。その軸を変えず更新を重ねながら、今もなお新しい空気を生み出し続けている。Licaxxxが見つめるのは、音楽の先にある人とのつながりだ。
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好きなことの延長線上に今がある

――DJ/アーティストとしての最初の一歩について教えてください。音楽に惹かれた原点はどこにあったのでしょうか。
小さい頃からピアノを習っていたこともあり、音楽自体はずっと身近な存在でした。生活の中に自然と音楽があったので、気づいたら好きになっていたという感覚です。音楽には疎い家でしたけど、成長するにつれていろんなジャンルの音楽を自ら聞いて掘るようになって、そこから自然と“自分でもやりたい”という気持ちに変わっていった気がします。最初の一歩になったのは、中高時代に始めたバンド活動。ギターを担当していて、当時はUKロックを中心にやっていました。
――バンド活動を経てDJを始めたのは、どんな経緯だったのでしょうか?
振り返ると、すごく自然な流れだったと思います。バンドをやっていた頃から、音楽を聴くことそのものが好きだったし、もっと自由に音楽を扱える表現に惹かれていった結果がDJだったのかなって。始めたのは大学に入る少し前なのですが、その頃は完全に趣味でした。周りにDJをやっている人がたくさんいたわけじゃなかったので、自分から教えてくれる人を探したり、スタジオに入って練習したり、友達の家で機材を触らせてもらったりしながら少しずつ覚えていきました。
――趣味から仕事と意識するタイミングはいつ訪れたのでしょうか?
正直、今でも音楽=仕事という感覚はあまりないです。あえて言うなら大学を卒業したあと、今の会社に社員兼アーティストとして所属したタイミングですかね、明確に責任と対価が発生するので。好きなことを続けてきた延長線上に今がある感じではあります。でも人前に出ることに関しての意識はプロです。
――Licaxxxさんは、音楽だけでなくファッションカルチャーとも近いイメージがあります。
洋服は昔から好きでした。私がDJを始めた2009〜2011年頃って、ファッションとエレクトロミュージックの距離がすごく近かった時代で。クラブイベントも、音楽だけじゃなくてファッション込みで空気が成立している感じがありました。だから自然とそのカルチャーの中にいた感覚がありますし、自分の表現の一部としてファッションがあることも自然なことでした。
――初期の頃は前髪ぱっつんロングヘアのイメージも印象的でした。
あの頃は、とにかく覚えてもらうことを意識していました。DJって音だけじゃなくて、その人の存在も含めて記憶される仕事だと思うので。見た目もひとつのアイコンになるし、それも含めて表現だと思っていたので、あえてヘアスタイルを固定していた時期がありましたね。
――海外での活動も多いですが、印象に残っていることはありますか?
基本的にどの国に行く時も移動が大変です(笑)。クラブイベントって週末の夜に集中していることが多いので、短期間で何都市も移動することも珍しくなくて。体力的にはかなりハードなんですよ。でもその土地ごとにフロアの空気感が違うので、それを体感できるのはすごく面白いです。
――お気に入りの国や都市はありますか?
やっぱりイギリスですね。自分が好きな音楽のルーツがある場所なので特別です。80年代後半から90年代初頭にロンドンを中心に起きていたレイブカルチャーには今でもすごく影響を受けていますし、その空気感や価値観にはずっと憧れがあります。
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インスピレーションは、フロアから

――周囲からはどんなイメージを持たれることが多いですか?
実際はそんなことないんですけど、クールで強い印象を持たれてる気はします。あと隙がないとか。SNSやラジオでの発信はしますが、Licaxxxならどう発言するのかみたいなことは常に頭の隅にあります。はっきりと公私を分けている訳ではないですが、私自身を曝け出すほうが疲れる気はします。
――SNSが身近な時代において、自分をどこまで見せるかというのは難しい問題ですよね。
難しいですね。もちろん発信すること自体は大事だと思うんですけど、自分の中では見せること自体が目的になる感覚があまりなくて。必要なことをちゃんと届ける、くらいの距離感がちょうどいいです。
――活動を続ける中で、自分らしさに変化はありましたか?
あまり変わっていないと思います。好きなものも価値観も、根本はずっと同じですね。年齢を重ねることで見える景色は変わったと思うんですけど、軸になっているものはあまり変わらないです。
――プレイや選曲のインスピレーションは、その“好き”の延長線上にあるのでしょうか?
そうですね。でも実際にプレイする時のインスピレーションは、完全にフロアです。DJをする時はちゃんと準備もしていくんですけど、結局はその場で9割以上決めてます。お客さんの雰囲気とか、場の空気とか、その瞬間の熱量をすごく見ています。
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――理想とするフロアのイメージや雰囲気を教えてください。

お客さんがずっとフロアにいたくなる状態が理想ですね。自分のことを見てほしいという気持ちはなくて、自然と音楽に没入して、気づいたらずっと踊っていた、みたいな空気が一番いい。そういう空間を作れた時はすごくフロアとハマったな〜と思います。

――クリエイティブな部分で影響を受けているものはありますか?

映画にはかなり影響を受けています。特にSF映画が好きですね。映像と音楽の関係性ってすごく面白くて、空気の作り方とか間の取り方とか、そういう部分でもインスピレーションをもらうことが多いです。映画館も好きですし、配信動画もよく観ています。

――ファッションのこだわりについても教えてください。

DJをする時は長時間プレイするので、フロアでストレスなく動けることが一番大事です。なのでジャージのセットアップだったり、スポーティな服装が自然と多くなります。足元は圧倒的にスニーカーが多いです。デザインはもちろんですが履き心地も選ぶ時のポイントになっています。もともと影響を受けてきた90年代のレイブカルチャーも、機能性とストリート感がすごく近いカルチャーなので、その感覚が今の自分のスタイルにも自然と残っている気がします。そこにジュエリーを合わせて、スポーティなだけではないニュアンスを足すのも好きです。
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音楽の先にあるコミュニケーション

――第一線で活躍を続ける中で、壁や困難に直面したことはありましたか?
あったとは思うんですけど、自分の中ではあまりそれを困難として捉えていないかも。飛行機が飛ばないとか、現場に行けないとか、いわゆるアクシデント的な出来事は過去に何度かありました。でも起きてしまったことは変えられないので、その事実を受け止めるしかないんですよね。

――予期せぬ出来事が起きた時は、どう気持ちを切り替えていますか?

“次にどうするか”、を真っ先に考えます。コロナ禍の時もそうでした。現場がなくなったなら、配信やラジオに力を入れてみようとか。自分の中では優先順位が変わるだけ、という感覚で。だから、気持ちを切り替えるというより、自然と次のことを考えているのだと思います。

――いろんな状況を経験してきた中で、LicaxxxさんがDJとして変わらず大事にしていることは何ですか?

DJって、自分の表現ではあるんですけど、それだけで完結するものではないんですよね。音楽を選んで届けることで、お客さんとの間にコミュニケーションが生まれる。だから一方的に見せるというより、フロアとのキャッチボールみたいなものだと思っています。

――コミュニケーションについてもう少し詳しく教えてください。

コミュニケーションは私にとって、ずっと考えている大きなテーマです。DJもそうだし、ラジオで喋ることも、文章を書くことも、どう伝わるかを第一に考えています。たぶん根本には、音楽そのものだけじゃなくて、それを通して人とつながることへの興味があるんだと思います。伝えることとつながること、その両方が自分の活動の軸になっている気がします。

――最後に、今目指していることを教えてください。

横のつながりをもっと強くしたいですね。日本には素晴らしいDJがたくさんいるんですけど、シーンとしてのコミュニティが少し見えづらい部分もあるので。もっと若い世代が入りやすい環境を作ったり、みんなで面白い現場を生み出していけたらと思っています。自分ひとりの活動だけじゃなくて、シーン全体がもっと面白くなるような流れを作れたら。それはここ5〜6年くらい、ずっと考えていることです。
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PROFILE
Licaxxx
1991年東京都生まれ。DJ/ビートメイカー/ラジオパーソナリティ。ジャンルレスな選曲と鋭いキュレーションセンスを武器に、国内外のクラブシーンで活躍。音楽フェスやファッションイベントへの出演に加え、ラジオ、執筆、楽曲制作など多角的に活動を展開。ジャンルやフィールドを横断しながら、独自の感性とスタイルでシーンを牽引している。

-KICKS & ECHO by Mizuno- アーティストやクリエイターと共に“静かな情熱”を記録し、文化としてのMizunoを育てていくカルチャープロジェクト。

Creative Direction: Riza Fujimoto
Photography: Yoshitake Hamanaka
Styling: Sho Furukawa
Hair & Make up: Megumi Kuji
Interview: Asa Takeuchi
Edit: Akiko Tomita
Production: Me&Co

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