元カーリング日本代表
ロコ・ソラーレ代表理事

本橋麻里さん

旅とは、

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自分の環境を現地に持ち込むのではなく、現地の環境に自分を馴染ませる。

世界大会になると、試合自体に1週間ほどかかるんです。なので、その2週間くらい前から現地に入って、時差ボケをとったり、体調を整えたり。つまり2~3週間はいつもと違う環境で過ごすわけなので、コンディションを保つのにチームのみんな、けっこう気を使ってましたね。これじゃないと寝られないからって枕を持ってくる子もいました。
もちろん私も最初はすごく気にして、あれもこれもってスーツケースに詰め込んで。あげく重量オーバーで、空港で手荷物に入れ替えるハメになったりして(笑)。なかでもチームのみんなにびっくりされたのは、ゴム手袋。宿泊先によっては洗濯物を自分で手洗いすることもあるので母親に持たされていたんですけど、なんでそんなの持ってきてるの、これで何をするのって言われました(笑)。
そんなこともあってだんだん面倒になってきちゃって、反対に荷物を減らす努力をするようになりました。シャンプーなんかも最初は小分けにして持っていってたけど、途中からは現地調達するようになって。現地の環境にどれだけ慣れるかに勝負をかける方向にシフトしていったんです。

 

目的が変わると、とたんに旅慣れしていない人に。

プライベートで旅行するようになったのは、結婚してから。毎年、沖縄へ家族旅行するのが恒例になりました。海外には競技でよく行ったので、むしろ国内旅行がしたいんです。私の場合、15歳くらいから競技人生が始まったので、幼少時に道内を家族旅行したことがあるくらいで、それ以外でプライベートの旅行ってほとんど経験がなかったんですよ。世界選手権の出場を優先したので、卒業旅行も行きませんでしたし。
そんなだから、いま、夫と子どもと旅行するってなったときに、何を持っていけばいいのか、どうやって荷づくりしたらいいのか、皆目わからなくて。そっか、ジャージはいらないよね、みたいな(笑)。合宿だと基本的には洗濯機があるところに泊まるから、服は最低限持っていけばいいんですけど、洗濯できない場合は着替えは何セット持っていけばいいんだろう? なんて。いちいち悩んじゃって、国内旅行なのに1週間前からパッキングを始めたりして(笑)、なんだか、とたんに旅慣れていない人になっちゃうんです。

ちょっぴり残念だったのは、怪我しちゃうかも、体調を崩しちゃうかもって思うと、どうしてもセーブがかかってしまって。旅先では宿からさえ出ないこともあったし、食事も生ものは食べないようにしたり。目的のためには仕方のないことですが、もっと楽しめればよかったな、という思いも正直ありますね。

人間力の差に愕然とした、遠征先。

現役時代はいろいろな国に行きましたが、共通していたのは、出会った人たちがみんなやさしかったこと。国が違っても、政治的にいろいろあっても、現地の人たちはいつだって歓迎してくれて、困ったときには助けてくれました。お互いにそういう関係にすぐになれるのが、たぶんスポーツのよさのひとつなのかもしれません。
それで、出会った人たちってみんな、自分のお国自慢をしてくるんです。故郷の田舎の小さな村のこと、一緒に暮らしている家族のこと。こんなにすてきなところなんだよ、こんなにいい人たちなんだよって、自分の生い立ちのなかにある素朴なものをしっかりと理解していて、初対面の外国人にもきちんと言葉で説明できる。それが、当時高校生だった私には衝撃だったんです。もちろん逆に質問もされるわけで、日本から来たっていうと、日本のどこ?って突っ込まれる。だけど、それに上手に答えられないんですよね。
そのときの私は、ただカーリングに打ち込んで、ただカーリングで結果を出せばいいと思っていました。でもそういう選手たちと接して、日本のことを何も知らない自分に、あれ、このままでいいのかな?って。言葉の壁に加えて、文化敎育の違いを見せつけられたっていうんでしょうか。それでもって競技の成績にも差をつけられてしまうと、どうやらこれは、単に競技をやっていれば強くなるっていう話ではなさそうだぞって気がついてしまった。

たかがスポーツ、されどスポーツ。

だから、たかがスポーツとくくるのか、されどスポートと向き合うのかで、景色が全然変わってくると思う。私は最初、前者でした。成績を出せればOK、言われたことをクリアできればミッション終了、みたいな感じです。だけど海外の選手を見ていると、自分で考えて、自分で行動している。その能力が、競技で戦っていても露骨にわかってしまう。
この気づきと焦りは、私が地元に戻ってチームをつくったことにも大きく影響していると思います。特に海外の女子カーリング界って、ママさんが多いんです。赤ちゃんをベビーカーに入れて会場に連れてきて、授乳してからプレイするなんてこともざらで。そういう光景を見てきていたので、自分もこうなるのかなって勝手に思い込んでたんですけど、いざ自分が年齢を重ねると、その環境を日本で手に入れるのは難しいという現実を目の当たりにして。これは、誰かが道をつくってくれるのを待っているんじゃダメだな、自分でやらなくちゃって。
選手としてはもとより、人間として成長しなくては。海外の選手たちから刺激を受けたことで、今の自分の考え方があるのかなって、そう思います。いまは自分が育成する側になって若い子たちと接していますけど、これからはもっと、スポーツだけしていればいい時代ではなくなっていくんだろうなと痛感しています。

1986年、北海道北見市出身。カーリング日本代表選手として、トリノ、バンクーバー、平昌のオリンピック3大会に出場、平昌では銅メダリストに。2010年に地元・北見でチーム「ロコ・ソラーレ」を結成、2016年の世界選手権で銀メダル獲得。現在はロコ・ソラーレの代表理事としてチーム運営やコーチ業をメインに活動中。プライベートでは二児の育児中。

本橋麻里さんの旅の必需品

アミノバイタルは持っているだけで安心できる、お守りのような存在。試合前、試合後、体調が思わしくないとき……要するにいつでも役立ちます。それから、最近必ず身につけるようにしているのが腕時計。ケータイを見ずに時間がわかるのがいいなって、あらためて。家族と旅するときは特に、なるべくケータイから離れていたいから。

動きやすさ、着心地のよさ、丈夫さ、メンテナンスのしやすさ、多機能性……。旅に適した服って、じつは子育て中のママにもそのまま適してるんじゃないでしょうか。ママは何かと荷物が多いので、軽い、シワにならないといったことも重要。さらには、自分のアウターがそのまま、寝てしまった子どものブランケット代わりになったりと、想定されている以上の使いまわしができそう。そんな便利さを備えたうえで、おしゃれ心も満足させてくれるのが嬉しいです。

世界各地の自然や文化、暮らしのなかから生まれるストーリーを独自の視点で編集する「地上で読む機内誌」。表紙のダイマクションマップが表現するように、ひとつの連なる世界を意識し、さまざまな土地の豊かな物語を紡いでいくメディアです。2002年創刊。

旅先でいちばん見たかったのは、
いつもよりアクティブになった私でした。

旅の服を選ぶことは、旅に連れていきたい自分を選ぶこと。
心地いい服は、どんなガイドブックよりも私を連れ出してくれる。
行ったことのない場所、見たことのない景色。
そこで出会えるのは、いつもより、少しアクティブになった自分。
新しい出会いは、日常の一歩先で待っている。
さあ、出かけよう。
きょうは、どんな一日になるだろう。

遊べる大人の、トラベルウエア。